阪神藤浪晋太郎投手(28)が完全復活の2連勝だ。中日打線を7回5安打、7奪三振1失点と圧倒。今月6日の1軍復帰後、先発4試合ともクオリティースタート(6回以上自責3以下)の快投だ。負ければ最下位中日に2・5差に迫られた一戦で、前回13日に敗れた小笠原との“夏の甲子園V腕対決”のリベンジにも成功。28日にプロ初登板初先発するドラフト1位の後輩、森木大智投手(19)に勝利のバトンをつないだ。

    ◇   ◇   ◇

101球目。強く蹴り上げた右足が暴れた。藤浪は構わず右拳を振り上げた。2点リードの7回2死一塁、最後は代打三好を153キロでねじ伏せ、空振り三振で締めた。「シャーッ!」。あふれ出る感情を思う存分、雄たけびに込めた。

「相手先発の小笠原くんもすごく粘って気持ちの良い投球をしていた。自分も負けないようにと思って」

今季2度目の甲子園V腕対決。前回13日は7回1失点と快投しながら、7回無失点の小笠原に敗れていた。今回は7回を7奪三振5安打2四球で1失点。2328日ぶりの巨人戦白星を手にした前回に続き、自身2連勝で18年9月29日以来、1428日ぶりとなる中日戦白星をもぎ取った。

「以前は、世間に求められている藤浪晋太郎を気にしすぎていたのかもしれません」

昨年のある日、2軍調整を続ける鳴尾浜でそう苦笑いした。

「真面目じゃないと、とか…。周りからどう期待されているのかを考えて、それに応えようとしすぎて、自分で自分の藤浪晋太郎像に苦しんでいましたね」

12年秋のドラフト1位指名から虎の未来を背負ううちに、自分らしさを見失った時期もあった。でも今は違う。制球難に苦しみ、どん底の数年間を味わい、藤浪はありのままの感情をさらけ出すようになった。

「今は割と自分に素直でいられています。『いい子ちゃん』じゃなくていいやん、ぐらいの感覚で」

この日は思うように犠打を転がせないと苦笑い。ピンチを切り抜けると身ぶり手ぶりで喜びを表現し、最後はほえた。自然体でプレーできる姿からも、心身の充実ぶりが伝わってくる。

スプリット警戒を感じ取り、すべて直球系で7奪三振。「自分のパターンだけでなく、相手を見てできている」。1軍復帰後は7回途中2失点から3戦連続で7回1失点。矢野監督も「ほぼ申し分ない。素晴らしい」とうなる内容が続く。

これで通算1000奪三振まで残り10個。何より笑顔でバトンを渡せる事実がうれしい。

「明日はルーキーの森木なので、温かい声援で応援してあげてください」

酸いも甘いも知り尽くした28歳。ヒーローインタビューで後輩を気遣う姿が、今まで以上に頼もしい。【佐井陽介】

 

〇…藤浪が森木にエールを送った。後輩右腕は28日の中日戦でプロ初登板初先発を予定。先輩は9年前の自身初登板を「そんなに頭が真っ白ということもなかった」と振り返りながら、快投を願った。「深く考えない方がいいかな。周りがバックアップしてくれると思うし、自分のやりたいことを思いきりやるのが大事。一生に1回のプロ初登板。思い切ってやってほしい」。同じ高卒1年目でのデビューを温かく見守る。

〇…佐藤輝がリーグトップ、30本目の二塁打を放った。5回1死の第3打席。今季4打数無安打に抑えられてきた小笠原の120キロのナックルカーブを捉え、左中間を破った。この日は4番三塁で出場し、7回裏から右翼に回った。試合前には三塁ノックに続いて二塁でもノックを受けた。前日26日はプロ初の二塁守備に就いたが、「セカンド輝」は今後もオプションとして可能性がありそうだ。

〇…ケラーが圧巻の3者連続空振り三振で締めた。4点リードの9回に登板。先頭の代打レビーラは154キロの直球で仕留め、続く後藤は144キロの変化球で空を切らせた。土田は追い込んでから8球粘られたが、最後は153キロの直球で斬った。20日巨人戦以来中6日。セーブがつかない場面でも、全力投球で役割を果たした。6月19日のDeNA戦から15試合連続無失点で抜群の安定感を発揮している。

〇…5試合ぶりに3番に復帰したロハスが先制決勝打を放った。初回、中野と近本の連打で無死一、三塁。右打席から小笠原の初球真っすぐを左前に運んだ。今季藤浪が先発した試合は打率4割1分2厘の援護射撃ぶり。「与えられたチャンスで一生懸命出し切るだけ。チャンスを逃さず、しっかり結果を残せるようにやっている。結果的に先制点が取れたので良かったです」と笑顔で振り返った。

 

○…先発した前日26日の中日戦で右中指の爪を負傷し、3回で降板した西勇が元気な姿をみせた。バンテリンドームで、試合前練習に参加。右中指にテーピングを巻きながら、全体のウオームアップを実施。キャッチボールは行わなかったが、1球だけ力強くボールを投げる場面もあった。次回先発見込みの9月2日巨人戦(甲子園)の登板に向け、問題はなさそうだ。

○…コロナ陽性判定から再起を期す糸井が状態を上げてきた。新潟での2軍交流戦の巨人戦に「1番DH」で出場。3回に栄枝、高寺が連続安打を放った無死一、三塁の第2打席。先発右腕堀田の変化球を捉えて右前に運んだ。ヒットは1本だったがこれが先制決勝打となり、4打席フル出場した。無症状で9日に抹消され、隔離期間を経て2軍で調整。23日の2軍オリックス戦で復帰し、同24日にはマルチ安打を放つなど、4試合に出場して実戦感覚を研ぎ澄ましている。

○…右足のコンディション不良で2軍調整中のマルテが、本塁打を含む2安打、3打点の大暴れで1軍再昇格を猛アピールした。2軍交流戦の巨人戦に「3番一塁」で出場。1点を先制した3回、なお1死二、三塁で堀田の直球を捉えて左越えの2点二塁打。8回には左腕戸根の変化球を完璧に捉え、左越えに4号ソロを放った。7月14日に抹消されたが状態を整え、8月は5試合で14打数6安打、2本塁打、6打点。3試合連続打点と絶好調だ。