ノムさん、見てくれましたか。ヤクルト村上宗隆内野手(22)が2試合連発となる52号ソロを放ち、63年野村克也(南海)と85年落合博満(ロッテ)のシーズン52本塁打に並んだ。6回先頭、阪神先発青柳からバックスクリーン左に放り込んだ。勝負の9月に入っても4試合で3発と、勢いの衰えない「村神様」。64年王貞治(巨人)の日本選手最多55本塁打まで、あと3本に迫った。

    ◇    ◇    ◇

天を見上げて合掌した。偉大なレジェンドたちの中でも特別な存在に、ついに肩を並べた。村上は1点リードの6回無死、青柳に対し、1ストライクからの2球目、外角144キロ直球を捉え、バックスクリーン左へ運んだ。「偉大な野村克也さんと本塁打数が並ぶことができて光栄です」。90年代に「ID野球」を確立した元監督で高津監督の恩師。プロ1年目の春季キャンプで初対面を果たしている大先輩に報告するかのように、手を合わせ、夜空を見上げながら、ゆっくり本塁を踏んだ。

得意の甲子園で決めた。試合前まで今季阪神戦は19戦で打率3割5厘、6本塁打、15打点。セ・リーグ相手では巨人と並ぶ最少本塁打に抑えられているが、甲子園では6試合で22打数8安打の打率3割6分4厘、5本塁打9打点。7月31日には、その後の5打席連発につながる3打席連続本塁打を放っていた。またこの日は、左打者に不利と言われる右翼から左翼方向に強く吹く名物の「浜風」が少し控えめだった。天国の野村さんが“アシスト”してくれたのかもしれない。

難敵・青柳をじわじわと攻略した。変則右腕に対し、第1打席は空振り三振に終わったが、9球粘ってプレッシャーをかけると、4回1死一、三塁では3ボールからの4球目、低め128キロシンカーを「チャンスだったので大振りせずコンパクトに打つことを心掛けました」と、右前に運ぶ先制適時打。6回の1発へとつなげた。

次々と記録を伸ばしていく22歳は、常々「数字ではないので」と言いつつも、「その位置にいれるというのはすごく光栄なこと。肩を並べて、追いつけ追い越せと、やっていきたいなという思いはあります」と上を見据える。残り21試合。偉大なレジェンドを最後まで追いかけ続ける。【鈴木正章】

▼村上が今季52号。シーズン52本以上は13年バレンティン(ヤクルト)以来8人目で、日本人選手では85年落合(ロッテ)以来4人目。チーム122試合目に52号は13年バレンティン114試合目に次いで2番目のペース。村上はすべて先発4番で打っており、4番で52本以上は85年落合52本、02年カブレラ(西武)55本、13年バレンティン58本(他に5番で2本)に次いで4人目。日本人の4番では落合に並ぶ最多本数だ。これで甲子園球場では7戦6発。今季の村上はホーム(神宮、松山)の60試合で19本に対し、ビジターは61試合で33本と1.8試合に1本ペースで量産。52年のフランチャイズ制後、ビジターで33本は77年王(巨人=ホームは17本)に並ぶタイ記録となった。

▽ヤクルト高津監督(村上の52号に)「すごいね。ムネの当たりだね。(1年目に野村克也さんに)紹介したこと、昨日のように思い出します」

【関連記事】ヤクルトニュース一覧