ホンマに64歳!? 阪神が2日、3年ぶりに高知・安芸で秋季キャンプインを迎えた。

岡田彰布監督(64)は14年ぶりの安芸で精力始動。自ら3球遊撃ノックを受けて小幡、高寺、熊谷の若虎に実演指導するなど、25日に65歳になるとは思えないはつらつぶりで練習を盛り上げた。二遊間は日刊スポーツも秋季キャンプ中、「二遊間バトル」と題してお届けする注目ポイント。岡田監督が初日早々、体を張って強化に乗り出した。

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午後に行われた安芸サブグラウンドでの内野特守。岡田監督がおもむろにグラブを手にはめ、遊撃の位置で馬場コーチにノックを要求した。転がった白球が、鮮やかな赤グラブに吸い込まれる。捕球後に2歩、3歩踏み出したステップも軽快だ。本当に12球団最高齢監督の64歳? 現役時代をほうふつとさせる超極上の3球のお手本を小幡、高寺、熊谷に実演してみせた。

捕球予定はなかった。サブ球場に向かう道中、新品の赤グラブを手に「硬いな。カチカチや」と嘆き、「(球は)受けんよ」と否定していた。だが、若虎のノックを見て、いてもたってもいられなかったようだ。

「捕るポイントが近い。差し込まれるのが多い。グラブが体の下ぐらいで捕っている。人工芝ならあれで対応できるかも分からんけど、甲子園のグラウンドではあれは対応できない」

「もう少し前で捕れって言えばできるやん。何でやらんかったんやろうと思ったけど、言ったらできる」

足の運び方を学んだ3選手は早速対応。岡田監督ものニヤリだ。守りの野球を掲げ、5年連続リーグ最多失策からの劇的改善を目指す指揮官にとって、二遊間は最重要ポジション。この秋はレギュラー2人、控え2人を選別する重要期間に位置づけている。関係者は「前回監督の時は指導はコーチに任せていた。実演は初めてじゃないか」と驚くお手本守備。二遊間固定への熱い思いが、予定外に体を突き動かしたようだ。

特守のメンバーの3人は、宮崎でのフェニックスリーグに参加し、甲子園での秋季練習は不参加組。岡田監督はこの日が初対面だった。中でも小幡にかける期待は大きい。「俺は一番最初に『小幡、ショート守らせ』言ってた。それだけ期待している。内野でも一番必要なポジションよ」。

安芸は現役時代に鍛錬した原点で、第1次監督時代の08年の春季キャンプ以来。14年の年月を重ねたが、初日からブルペン、サブグラウンド、メイングラウンドと高低差の激しい3地点を精力的に上り下りした。「元気はないよ。しんどいよ。そんなもん元気なわけないやん」。苦笑いで1日を振り返ったが、25日に65歳を迎えるとは思えない。18年ぶりV奪回へ、元気はつらつの指揮官が安芸の陣を引っ張る。【前山慎治】

◆岡田監督の守備 日本一の85年に二塁手に定着し、ダイヤモンドグラブ賞(現ゴールデングラブ賞)に輝いた。同年就任した吉田義男監督の意向で、前年まで正二塁手だった真弓明信が右翼へ転向。主に一塁や右翼を守っていた岡田が二塁に124試合固定された。同年の守備機会675(刺殺272+補殺403)と併殺参加84はセ二塁手最多。遊撃平田勝男との息の合ったコンビでセンターラインを固めた。86~88年は出場全試合で二塁手。コーチとしては03年、1軍の守備・走塁担当として今岡、藤本、関本らを指導した。

▽阪神小幡(岡田監督の実演に)「やってくれると、目で見られてわかりやすかった。足の使い方とかステップとか(上手だった)」

▽第1次岡田監督時代の秋季キャンプ初日

◆03年11月7日(倉敷)関本に直接指導。ノックバットを手に、スイングのお手本を実践。田淵前打撃コーチ直伝の「うねり打法」禁止を言い渡した。

◆04年10月27日(倉敷)中西太臨時コーチに鳥谷の指導を依頼した。力の入り過ぎを直した鳥谷は、快打を連発。岡田監督は「よくなっている」と笑顔だった。

◆05年11月8日(安芸)2年前に続き、関本に熱血アドバイス。「あまりにも打つポイントが近い。今の打ち方じゃ長打も出ない」と打撃指導を行った。

◆06年10月29日(倉敷)新人右腕若竹の投球に足を止めた。天井を射抜くような角度で投じるカーブに「おもしろい球を投げとったな」と見入った。

◆07年10月30日(安芸)筒井と岩田の両左腕に熱視線。フォームの微調整を試していた2人に「やる気が伝わってきた。化ける可能性がある」と喜んだ。

▽近年の阪神新監督の秋季キャンプ初日

◆岡田彰布=03年11月7日(倉敷)じっくり観察することからスタートした。新任コーチと選手との会話などにも、耳を傾けた。さらに、投内連係などを引き合いに出し「もうちょっと練習せなアカンね。うまくない。バント処理も大事と認識しとかんと」と辛口だった。

◆真弓明信=08年11月3日(安芸)大砲復活を期待する桜井に密着すると、2時間にわたって打撃指導を展開した。桜井は「ポイントを言ってもらった」と目を輝かせた。「若手にはみんな期待している」と、やる気を大いに刺激した。

◆和田豊=11年11月3日(安芸)打撃向上が課題の俊介を、日替わりの強化選手に指名した。約4時間ほぼぶっ続けでフリー打撃やロングティーに取り組ませる異例のメニューを敢行。「同じことをしていたら、差が出ない、というメッセージ」。

◆金本知憲=15年11月1日(安芸)あいさつと返事を大きな声でするよう訓示。走塁練習中に指示を受けながら無言だった田面に、監督自ら「返事!」と怒鳴りあげた。また、大砲候補の陽川に、軸の回転を身ぶり手ぶりで伝えた。

◆矢野燿大=18年11月1日(安芸)年齢が離れた若手に、ニックネームをつけて距離を縮めたいという、新たなリーダー像を模索。島田海吏の話題を「海吏(かいり)やから『リー』と呼んでいたんだけど…」など。体育会系の上下関係ではなく、共感し合えるフラットに近い間柄を強調した。