キャプテンの参加は若手中心の巨人秋季キャンプに何をもたらしたのか-。11年ぶりの参加となった坂本勇人内野手(33)は第1クール3日間のみだったが、目に見えて効果が表れた。

ベテランの帯同は異例だが、川相昌弘総合コーチ(58)が発案した板グラブを使った基礎的な守備練習を毎日こなした。坂本は16、17、19~21年と遊撃手部門の三井ゴールデングラブ賞を5度受賞している。それでも同じポジションで同賞を6度受賞している川相コーチはさらなる技術向上へ新たな材料を与えた。「プッシュ捕球」だった。

「勇人、僕もそうだったけど捕球の時、ボールの勢いを吸収するために『引いて取る』イメージだよね? でもさらにアウトの確率を上げるためにできるだけ前で捕球し、ステップ、送球への動作へ流れるようにつなげていく。すると送球への出力もアップする」

川相コーチも現役時代、やったことがない練習法だが近年、メジャーを研究する上で体系化した。坂本も「自主トレでもいろいろやってますけど、また引き出しとして使わせてもらいたい。継続して良いオフシーズンにできれば」と手応えを口にした。

何よりも坂本参加の意味は若手への刺激にあった。ファームにいてはトップ選手と隣り合わせで練習する機会はまれだ。さらに川相コーチは守備練習を動画撮影。それをインターネット上の共有ファイルにアップロードし、全選手に配布しているタブレット端末で見られるようにした。

初日よりも膝を柔らかくし、より前で捕球していた香月一也内野手(26)は「勇人さんの動画を見て参考にした」と語る。川相コーチは言う。「(短期間でも)勇人がいて良かったと思う。彼が練習してるんだから(若手は)それ以上に練習しないと追いつけない。刺激になったと思うし、勇人のためにもなったんじゃないかな」。坂本は5日、帰路に就く。宮崎に置き土産を残して。【三須一紀】