飛躍の支えに「グラゼニ」精神あり!! 阪神湯浅京己投手(23)が27日、シーズン中のブルペン待機時に、選手名鑑を相棒にしていたことを明かした。中継を見ながら先輩たちと相手選手の年俸をチェック。シーズン途中でその習慣は自然消滅したというが、「最初の方はめっちゃやってました。ずっと“グラゼニ、グラゼニ”言うてたんで」と盛り上がっていたという。

グラゼニとは? 南海時代の名将、鶴岡一人氏の「グラウンドにはゼニが落ちている」の名言から生まれ、現代では人気野球漫画のタイトルにもなっている。作中の主人公で中継ぎ左腕の凡田夏之介は、他球団の1軍選手の年俸に詳しく、お金にまつわる選手模様をリアルに描いている。

湯浅の今年の推定年俸は500万円。高額年俸の相手を斬りまくり、最優秀中継ぎ賞、新人特別賞に輝く飛躍を遂げた。「(相手の年俸が)いくらだからとか気にして投げないでしょ」。そう笑い飛ばしつつ、心に残る対戦も口にした。

「今年一番、自分の中であれだったのは、ジャイアンツの坂本さんと初めて甲子園でやった時」。小学生時代は坂本のユニホームをパジャマにして寝ていたほど。「初めて対戦した時はめちゃくちゃ鳥肌立ちました」。4月16日、甲子園での初対戦は空振り三振を奪った。坂本の今季推定年俸はセ界野手最高の6億円。右腕一本で、5億9500万円もの金額差をひっくり返す下克上を決め、セットアッパーへの地位を築いていった。

年間通算を見ても、その坂本と5億円のヤクルト山田、4・5億円の巨人丸、2・2億の3冠王ヤクルト村上はいずれも3の0と“完封”。「グラゼニ」の“実写版”でファンを沸かせる大活躍だった。

「グラゼニ」の主人公凡田は徐々に活躍の幅を広げ、年俸を上げていった。湯浅も今オフの大幅昇給は確実だ。「グラゼニ」を体現した男には、バラ色のオフが待っている。【中野椋】

◆グラゼニ 南海ホークスでリーグV11回、日本一2回の名将で「親分」と称された鶴岡一人氏が残した「グラウンドにはゼニが落ちている」は、選手を鼓舞する球界の名言となった。この名言を由来とした野球漫画「グラゼニ」が、2011(平23)年から週刊モーニング(講談社)で連載開始。高卒のドラフト最下位でプロ入りした中継ぎ左腕の主人公、凡田夏之介は「グラウンドには銭が埋まっている」、略して「グラゼニ」を信条とし、彼のマネーサバイバルを描く。「パ・リーグ編」「大リーグ編」などが展開される長編の人気作となり、18年にアニメ化。主人公凡田役を、元中日監督の落合博満氏(68)の長男で声優の落合福嗣(35)が務めた。

○…来年3月の第5回ワールド・ベースボール・クラシック(WBC)の日本代表候補に挙がる湯浅が、ロジンへの適応を課題に挙げた。滑りやすいとされる大会公式球ではなく、「自分はロジンの方が嫌。ベタベタして」と説明。「ロジンをつけない方がキャッチボールとかでは感覚良く、ずっと投げられるようになってきた。いろいろ考えながらやりたい」。この日は鳴尾浜でキャッチボールを再開し、ランニングなどで汗を流した。WBC仕様のロジンも入手しており、試行錯誤を重ねて日の丸を背負う準備を進める。