西武中村剛也内野手(39)の声がグラウンドに響いたのは、9日の新人合同自主トレでのことだった。

「火縄銃、いいやないか!」

育成ドラフト4位の是沢涼輔捕手(22=法大)がキャッチボールで矢のような球を投げ続けたことを、ほめた。握り替えの遅さをいじられ、法大時代に付いた愛称。新入団会見で披露していた。中村はそのフレーズを知っていた。

「入団会見で、なんか言ったんですよね。僕は全然知らなかったんですけど。源田とかみんな言っていて。ちょうど来て、その話をしていたら。火縄銃やと」

すぐさま「ありがとうございます!」と返した是沢は、当日のことを「いやぁ、もう、ほんっとうにうれしかったですね」と笑顔で振り返った。

入団22年目、夏は40歳になる大ベテラン。新人歓迎の意を示したのか。「別にそういう気持ちはなかったですけど」と笑いながら「キャッチボールをしている姿を見て、おおー、これが火縄銃かと」と続け、報道陣を笑わせた。

454本の本塁打を重ねていく中で、立ち位置もどんどん変わっていった。

「それはあるかもしれないですね。若い時とかだったら、やっぱりポジションとか一緒だったら、内野手だったら多少はライバル視してたりしましたけど、そういうのも、何て言うんすかね、あんまりなくなってきたかなっていうのは」

この冬も源田、柘植、川野、山村、滝沢といろいろな年齢の打者たちと、サッカーボールでウオーミングアップしながら、自主トレをしている。「なんかいきなり動けるし、あの子たち、すっげえなと。マネできないなと思ってます」と驚きながら汗を流している。

あと46本で通算500本塁打、あと46試合で通算2000試合出場。満塁本塁打をあと3本打てば、世界記録に並ぶ。世界一。「ははははは!」と笑いながら「まぁね、なかなか打てるもんじゃないんですけど、打てるといいなと思っています」。アーチストとしてのこだわりは、今も昔も変わらない。

同じように中軸を張っていた強打者森が、チームを去った。「キャッチャーやろうかな」と目を細める。笑いながらも、少し真剣な表情も見せる。

「チームとして3番バッターと正捕手が一気にいなくなるというのはね、厳しいと思いますけど。まあ、誰か1人で何とかなるという話でもないと思うし、みんなでやっていきたいなと思いますけど」

先端を少しくりぬいたバットを黙々と振り、ともに戦う後輩たちに生き様を見せている。【金子真仁】

【関連記事】西武ニュース一覧>>