広島新井貴浩監督(45)が19日、和歌山の高野山別格本山清浄心院で護摩行に臨んだ。04年から始め、現役引退後も続けてきた。監督として臨んだ苦行では、チームの優勝と選手の無事を願い続けた。池口恵観大僧正(86)から「勇猛精進(ゆうみょうしょうじん)」の言葉を授かった。指揮官として戦う、心の準備を整えた。

襲いかかる炎に、立ち向かった。新井監督は立ち上る火柱に向き合い、チームのことを願った。約2000本の護摩木がたかれる苦行は、約1時間40分続いた。今回は不動明王御真言を唱えるだけでなく、池口大僧正の提言から「広島優勝、心願成就」とも言葉に出して叫んだ。ほおの下から顎まで赤く腫れ上がり、意識はもうろうとした。それでも最後まで、炎に打ち勝った。

「苦しい行を継続してやることによって、少々のことではへこたれない。シーズン中はうまくいかないときの方がはるかに多いと思うから、そういう時に自分の気持ちが“もうダメだ”じゃなし“まだ(へこたれては)ダメだ”と前向きになれる」

04年12月から始めた護摩行は、現役引退後の19年以降も毎年続けている。監督となってからは初めて。「本当に全員ケガなく元気に暴れ回って欲しい、という思いで護摩行をやっていた」。願いは自分のことではない。チームの優勝であり、選手の無事だった。

池口大僧正は「勇猛精進」の言葉を授けた。「光のあるところにはいいものが集まってきます。大きなオーラを出すことができれば、選手たちもついてきて、いい仕事をしてくれる」。長いシーズン、苦しい時期は必ず訪れる。それでもチームの光となり、選手を正しい方向へ導くことを期待した。

新井監督が1月に護摩行を行うのは、現役最終年の18年以来。シーズンに臨む前に欠かせないものだった。「ここで一気にグッと気持ちを締めて、キャンプへ入って行くと。スタートに向けての準備をする、スイッチを入れる。そういう節目になる」。指揮官として、ペナントレースを戦う準備は整った。選手とともに戦う炎を燃やし、大願成就を目指す。【前原淳】