日刊スポーツの名物編集委員、寺尾博和が幅広く語るコラム「寺尾で候」を随時お届けします。

    ◇    ◇    ◇

新型コロナウイルスの「第8波」はピークを越えたかにみえるが、とても収束と言えないのが実状だ。ちまたでは「マスク着用は個人の判断?」「5類になった際の行動制限は?」など戸惑いの声が沸騰している。

このほど名だたる感染症の専門家で、定期的に開催されてきた「新型コロナウイルス感染症 市民公開講座」が行われた。第4回目になる今回は『アフター・コロナに向けての課題』がテーマだった。

講師は、東京大学医科学研究所 感染症分野 教授・四柳宏、国際医療福祉大学成田病院 感染症科部長、同大学医学部 感染症学教授・加藤康幸、大阪大学大学院 医学系研究科 感染制御学教授・忽那賢志、ふじおか小児科院長・藤岡雅司の4人。

司会役は、大阪医療センター副院長・三田英治、ABCテレビアナウンサー・増田紗織だった。

プロ野球では4年ぶりに“声出し応援”が可能になる。大声を伴うイベントに関して政府は、これまでの会場の収容定員50%の上限を撤廃し、マスク着用など感染対策をすることを条件に、定員100%まで入場可能という方針を固めた。

四柳は大相撲の新型コロナウイルス感染対策ガイドラインの監修にアドバイザーとしてあたってきた。各部屋における感染対策の徹底、国技館では、会場で関係者がプラカードを持ち歩き、場内アナウンスを繰り返すなど、感染対策を徹底してきた。結果、大相撲初場所でクラスターは出なかった。

すでにJリーグは公式戦で“声出し応援”の段階的導入に踏み切っている。スポーツイベントの応援に四柳は「マスクを適切に着用していただければ感染するリスクは極めて低い」と語った。

今後の焦点は、日本野球機構(NPB)がガイドラインで共有してきた「応援スタイル」の取り扱いだ。

22年シーズンは「ジェット風船」「肩組、飛び跳ね等集団での動きを伴う応援」「トランペット、ホイッスル等の鳴り物」「メガホンを打ち鳴らしながらの声援」「ビッグプレー、ファインプレー等の観客のハイタッチ」「両手をメガホン代わりにした大声での声援、応援」を禁止してきた。

ウイルス感染症全般で研究活動を続ける四柳は「個人の息で膨らませたジェット風船は、飛沫が飛んで、それが場合によっては他の人の顔近くに飛ぶことになるので、非常に危険だと思います」と時期尚早との見方を示した。

また肩組なども「互いの接触そのものは問題ないとは思いますが、近い距離で肩を組みながら大きな声で応援するのが続く際は、必ずマスクを着用していただくのが前提で、できれば他の方に与える影響も考えていただければと思います」という。

四柳は「みなさんがきちんとマスクをつけたまま応援をしていただけるかどうか、あるいはルールを守っていただけるかどうかを確認しながら進めてはいかがでしょうか」とスタンド応援の状況を見極めながらの段階的な緩和を提案する。

専門家が懸念しているのは「5類」になって社会全体が緩んでいくことだろう。米国でオミクロン株XBB.1.5が急拡大しているので油断はできない。“前に”進むためにも節度をもった行動が求められるということだろう。(敬称略)

◆YouTube視聴サイト ※2月1日~14日 https://osaka.hosp.go.jp/event/202302full/(2時間全編) ※2月15日~4月14日 https://osaka.hosp.go.jp/event/202302short/(ダイジェスト版)