<阪神5-7広島>◇20日◇甲子園

信念の聖地初星だ。広島新井貴浩監督(46)が猛ゲキで守護神の栗林良吏投手(26)を立ち直らせ、指揮官として甲子園初勝利を手にした。

3点リードの9回裏、今季阪神戦2戦2敗だった栗林を迷わず投入。3連打で2点差に迫られると、就任後初めてマウンドへ。「お前で打たれたら本望」と伝え、後続を断ち切らせた。選手を信じ抜くスタイルで3連敗を阻止。再び首位に0・5ゲーム差まで迫った。

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広島新井監督は現役時代の涙を今も忘れていないはずだ。

プロ1年目のあるゲームで一飛を落球した直後のベンチ。当時の達川監督が「あんなヤツ、代えろ! もう2軍に落とせ!」と激怒する中、西田打撃コーチが「あと1打席だけお願いします。僕が責任を取りますから」と頭を下げていた。その直後、崖っぷちの打席でヤクルト川崎から右翼へアーチを放った直後、ダイヤモンドを回りながら涙が止まらなくなったそうだ。

「西田さんの言葉が聞こえてきた時点でもうグッと来ていてね。ホームランの後、ベンチ裏でもまた泣いてしまって、金本さんにだいぶちゃかされたよ」

照れ笑いで当時を振り返っていた指揮官。監督になった今、信頼がどれだけ選手を震い立たせるのかをよく知っている。【野球デスク=佐井陽介】