日本のプロ野球ファンに、「IMANAGA」が芸術的な投球を披露した。

WBCで侍ジャパンの世界一に貢献したDeNA今永昇太投手(29)が、広島戦で今季初先発。世界を驚かせた速球を軸に、パドレス・ダルビッシュの助言で改良したスライダーも駆使し、8回無失点の快投で初勝利を挙げた。昨季、8勝17敗と苦しんだ広島との初戦を制し、今季最多タイの貯金3で2位に浮上した。

   ◇   ◇   ◇

マウンドの中心で、球場に訪れたファン、仲間を魅了した。日本中を沸かせたWBCから約1カ月。今永が、今季初先発で8回無失点の好投で今季初勝利を挙げた。「ここまでうまくいくとは思ってなかったですけど、戸柱さんがうまく引き出してくれた」。パドレス・ダルビッシュから助言されたスライダーも交えながら、101球の「IMANAGA劇場」だった。

幕が上がった瞬間、速球で押した。初回は13球中12球が速球。101球中64球を投じ、高めに吹き上がるような軌道でねじ伏せた。「僕の真っすぐで一番、空振りが多いのが高め。意図してあそこに投げてるんじゃなくて、低めをめがけながら真っすぐをふかす、そんな感覚であそこにいってればいいかなと」と今永理論で凡打の山を築いた。

その逆に、超遅球で惑わせた。4回2死、西川への1ストライクからの2球目に83キロの超スローカーブを選択。見送られたが、3球目に118キロのカーブを空振りさせ、この日最速の150キロの速球で空を切らせた。球速差67キロの芸術的な配球だった。

「西川選手は天才と思ってるので、僕の本気が通用しない時がある。本気で投げてはダメだと思ったので、僕の心を楽にするために投げた」

マウンドでの思考も、今永流だった。「1点あげちゃいけないと思って、これまで失敗を繰り返してきたので、失点しても粘り強く投げればいいんだと。パフォーマンスを最大限に発揮するためにはそのマインドの方がいいんだと」と広島コルニエルと息詰まる投手戦を演じながら、心は終始冷静だった。

現役時代、通算172勝を挙げた三浦監督も今永の投球に心酔した。「芸術品を見てるような感じで、うまくコントロールしてたなと。誘い球、勝負球、すごく安定感のある投球でしたし、さすが今永のピッチングを見せてくれた」。指揮官も“芸術品”と重ね合わせるピッチングだった。【久保賢吾】

○…守護神山崎が5セーブ目を挙げ、今季5試合目の無失点リレーを飾った。1点リードの9回に登板。先頭の野間に不運な当たりの内野安打を浴びたが、中軸3人をピシャリと抑えた。エース今永の今季初登板を白星で飾り「僕らもうれしいし、明日につなげていきたいです」。三浦監督は「ヤスがいてくれるからつないでいけるし、今日もしっかり投げてくれた」とたたえた。