高卒3年目のオリックス山下舜平大投手(20)が、7回3安打8奪三振無失点でプロ2勝目を手にした。自己最速タイ158キロを出した剛速球とカーブを武器に、西武打線を翻弄(ほんろう)。プロ初勝利を挙げた11日楽天戦から中11日で連勝を飾った。規定投球回には1回2/3足りないものの、防御率0・52はロッテ佐々木朗に次ぐ“隠れリーグ2位”。指揮官もメジャー通算107本塁打を誇る助っ人も、大器の可能性を絶賛した。

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ゴンザレスの打球がスタンドへ飛び込んだ瞬間、山下は両手を目いっぱい伸ばし、190センチの大きな体でぴょんぴょん跳びはねた。杉本、石川とハイタッチしながら、無邪気に表情を崩す。「本当に勝ちたかったのでうれしかったです」。20歳の素顔が少しだけのぞいた。

マウンドに立てば笑顔は封印。初回に自己最速タイの158キロをマークし、危なげなく3者凡退。2、4回は二塁打と四球でピンチを招いたが、剛速球で押し込み、最大41キロ差のあった緩いカーブで惑わせた。「ランナーが出てからが本当の勝負だと思う。まだまだなんですけど、自分ができることを最大限やるのが自分の仕事」。自己最長の7回、最多102球を投げて全うした。

「原点回帰」の投球だった。直球とカーブ以外に投じたのはフォーク4球のみ。前回とは違った。もともと入団1年目から山下が試合で投げることを許されたのは、直球とカーブのみ。球団が考えた育成法だった。昨季まで育成コーチとして見守ってきた平井投手コーチは「舜平大のそのまま、成長してほしい。今あるものを伸ばしていこうという思いでした」とチームの思いを代弁する。試合中にフォークやスライダーを解禁したのは昨年から。まだ完成形ではない。末恐ろしい怪物だ。

大器の片りんを誰もが感じている。お立ち台に並んだのは、決勝2ランを放ったゴンザレス。「間違いなくメジャーで通用するものを持っている。特に真っすぐなんて本当にすごい球」。メジャー通算107本塁打の助っ人は、スラスラと絶賛の言葉を並べた。これから求めたいものを聞かれた中嶋監督も「そんなこと言ったらノーヒットノーランになるで。そんなこと言ったらパーフェクトになるで」と“高い要求”。それほど楽しみな存在だ。

当の本人はまだまだ満足していない。「きょうは結構、課題が残りました。でも、悪い中でも真っすぐで抑えることができたので良かった」。1歩ずつ、大きくステップアップする。【磯綾乃】

★山下舜平大(やました・しゅんぺいた)

◆生まれ 2002年(平14)7月16日生まれ。福岡県出身。

◆名前の由来 20世紀前半、オーストリアの経済学者ヨーゼフ・シュンぺーター。

◆球歴 小学3年の時に筑紫丘ファイターズで野球を始め、福岡市立三宅中では軟式野球部に所属。福岡大大濠高では甲子園出場なし。20年ドラフト1位でオリックスへ入団。

◆ダルビッシュ有との縁 野球を始めたきっかけの存在。3月の侍ジャパンの強化試合時に中嶋監督に連れられ初対面し、食事やトレーニング法を教わった。WBC後には、サプリメントなど贈り物が届き「いやあ、最高ですね」と感激。

◆練習の虫 球団の「選手が選ぶ努力家ランキング」で1位に。ダルビッシュらのSNSからも日々、自分のためになる情報を吸収している。

◆験担ぎ? 登板日にはどんぶり飯を食べる。「牛丼が出たら最高ですね」。この日は「しょうが焼き丼」を食べて力に変えた。

◆息抜き 部屋で1人の時間が好き。プロになって初めてテレビゲームを購入。