阪神大竹耕太郎投手(27)が、12球団単独トップとなる無傷の4勝目を挙げた。7回を無四球5安打で無失点。現役ドラフトでソフトバンクから移籍してきた左腕が、新加入の選手では球団初となる4戦4勝だ。

「やっぱり、9回行きたかったですね…」。試合直後、まだまだ投げたい欲求があふれ出た。移籍後最長の7回を98球。前回5回で降板した悔しさを晴らしたかと思いきや、納得していなかった。「自分の中で後半は尻上がりに投げていけた。余裕を持って投げられたので野手の力ですね」。援護点を運んでくれた仲間への感謝が尽きなかった。

ソフトバンク時代、宮崎キャンプ中に必ず足を運んだ店がある。ギョーザ専門店の「黒兵衛」。子どもの頃の口癖が「ギョーザくいちゃ~」だった男にとっては、1皿450円の大好物で腹を満たす瞬間が至福だった。店内の壁には左に巨人中田翔、下にソフトバンクなどで活躍した五十嵐亮太氏のサインに囲まれる形で、自身のサイン色紙が飾られている。「宮崎に行ったら絶対に行ってたんで。次に行く時はもっと活躍しているように」。球界トップクラスの先輩たちに負けないよう、これからも腕を振り続ける。

防御率は驚異の0・36。規定投球回まで3回1/3足りていないものの、防御率1位DeNA東の0・64をしのぐ数字だ。岡田監督も「ある程度投げると思ったから、開幕ローテーションに入れたんやけど、ここまでとはなあ」と驚く安定感。「まだまだ勝つんちゃうか、これ」とまで言わせた左腕。期待通り、まだまだ勝ち続けてみせる。【中野椋】

▼阪神大竹が今季無傷の4勝目で、勝利数リーグ単独トップに立った。阪神に新加入した投手で4戦4勝したのは、08年アッチソンの3戦3勝を抜いて球団新記録となった。大竹は22年オフに現役ドラフトでソフトバンクから阪神へ移籍。移籍初登板から4戦4勝は20年涌井秀章(ロッテ→楽天)以来。大竹はソフトバンク時代の交流戦でも3戦3勝で、これでセ・リーグ相手には7戦7勝とした。

▼大竹が3三振を喫し、今季は10打席すべて三振。連続打席三振のプロ野球記録は03年ドミンゴ(横浜)の18打席だが、阪神では14年藤浪の10打席に並ぶワースト記録。シーズン初打席から10打席以上は66年徳久(近鉄)11打席、03年ドミンゴ18打席、06年土肥(横浜)11打席に次ぎ4人目。

■母「決めたことは納得するまで」

<とっておきメモ>

大竹は子どもの頃、「出来高制」で小遣いをもらっていた。背景には母和子さん(61)の“戦略”もあったようだ。「中3の夏の全国大会までは全然、塾には行っていなくて。それで『何位に入ったら何円あげるよ』って言っていました。あめとムチだとあめかな」と母は笑う。

和子さんの相乗効果もあり、中学のテストでは最高で学年2番の成績を残した。塾に行く時間が取れなくても地道に勉強を重ね、熊本県内屈指の進学校、済々黌に進学した。

「小さいころから穏やかで優しい性格だけど、自分で決めたことは納得するまで続けられる芯があった子でした」

何事にも我慢強く挑戦。ハードルを設定し、1つずつクリアしていく。「積み重ねられる力」は子どもの頃から備わっていた。【三宅ひとみ】

【関連記事】阪神ニュース一覧