ヨコ、打ったよ。阪神梅野隆太郎捕手(32)が、天国にささげるマルチ安打を放った。13年のドラフト同期だった横田慎太郎さんが脳腫瘍のため28歳の若さで亡くなり、この日が告別式。ヤクルト戦は終始劣勢だったが諦めず、7回に2点差に迫るタイムリー、9回にも右越え安打を放ち、悲しみを胸に精いっぱいのプレーを届けた。弔い星は持ち越したが秋に必ず、横田さんにアレを届ける。決意を新たにした1日になった。

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梅野は右手ひとさし指を天に向けた。野球を愛した仲間への思いを込めるかのように。意地の適時打をささげた一塁ベース上。試合後「横田さんを思ってか」と問われると、うなずいた。

「そうっすね。そういうものもあるし、そういう思いを同期入団でね、強く持ってるんで。最後まで戦い抜きたいですね」

亡き友に送る後半戦初安打のタイムリーは7回だった。0-5から森下の2点打で3点差に迫りなお2死三塁。ヤクルト2番手石山の外角速球を中前に運んだ。3点を追う9回1死一、二塁では、右越え安打で満塁機をつくった。試合は終始相手ペースだったが、最後まで諦めない。諦めるわけにはいかなかった。

18日に亡くなった横田さんは、4歳年下の13年のドラフト同期。同じ九州出身。担当スカウトは田中秀太現2軍コーチと共通点が多かった。訃報直後には「横田の諦めない姿から、プロ野球選手として最後まで諦めずに戦い抜くという思いを強くしました。横田の思いも常に自分の中に持ち続けて、現役生活をまっとうしていきたい」と決意を込めていた。直接最後のお別れはできなかったが、供花を鹿児島に送り、東京からバットで盟友を悼んだ。

「前半戦、自分でも成績がよくなかったので、後半戦、取り返せるチャンスがあると思う。とにかくチームの勝利をと思って、これからまた戦っていきたい」

弔い星は送れなかったが、病と闘った横田さんの分まで全力でプレーする。18年ぶりの「アレ」を必ず、天国に届ける。【中野椋】