ヤクルトのドラフト5位ルーキー、北村恵吾内野手(22)が史上5人目となる満塁弾でプロ初安打を記録した。4点リードの3回1死満塁、広島森の初球を左翼席に運んだ。新人では1967年の槌田誠(巨人)以来、56年ぶり3人目の快挙となった。中大時代は2学年先輩だったDeNA牧秀悟内野手(25)と寮の同部屋。WBCで世界一となった師匠から常にもらい続けた激励を胸に、この日を迎えた。

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「中央大学からドラフト5位で指名された北村恵吾です」。初のお立ち台で、少し遅れた8月の自己紹介。初々しさとは裏腹に、残した結果は豪快だった。

4点リードの3回1死満塁、広島先発森の136キロ初球を振り抜き、打球は左翼席へ一直線。「打った瞬間に入ったかなと」。プロ初安打が満塁弾。ダイヤモンドで受けた大歓声は「結構、浴びてました。最高だな~って」と不思議と余裕すら生まれていた。

ホームにかえると手荒い祝福が待っていた。三塁走者として先に生還していた1学年上の村上がケツキック。ナインとハイタッチを終えた最後でも、村上に手袋で頭をたたかれ、3冠王と大いに喜びを共有した。

オスナが下半身のコンディション不良で離脱後、4日に5月以来となる2度目の昇格。同日の中日戦(バンテリンドーム)では4打数無安打で師匠の牧からすぐにLINEが入った。「何やってるんだ。早くプロ初ヒット打てよ、というメッセージをいただきました」。慰めよりも、中大時代から慣れ親しんだ激励が力になった。

先輩に恵まれる星なのか。ヤクルトでも41歳青木、35歳川端が進んで熟練のアドバイスをくれた。青木からは打席でのタイミングの取り方を。代打が多い川端からは、打席ごとにどういう打ち取られ方をしたかを考え、次打席の配球を読むよう教えられ、「本当に勉強になった」。

第1打席では右犠飛で先制点となるプロ初打点。5回1死三塁では中前適時打を放ち、この日だけで6打点を挙げた。この結果なら、さすがに師匠も文句は言わないだろう。自身も「90点はあげられるかな」。

入寮時に持参した「くまのプーさん」のぬいぐるみ。近江高入学時、親元を離れる際に両親にもらった。今でも「隣にいます」とともに寝ている。プロ1号のボールは「たぶん両親に渡します」。プーさんのお返しが、やっとできる。【三須一紀】

◆北村恵吾(きたむら・けいご)2000年(平12)12月18日、岐阜県大垣市生まれ。中学時代は西濃ボーイズ所属。近江では甲子園に3度出場(1年夏、3年春夏)。高校通算44本塁打。中大では1年春からベンチ入り。4年時は主将を務め、春秋のリーグ戦でベストナイン獲得。22年ドラフト5位でヤクルト入り。182センチ、90キロ。右投げ右打ち。今季推定年俸750万円。

▼新人の北村が3回にプロ1号となる満塁本塁打。プロ初本塁打が満塁は今年の6月1日茶野(オリックス)以来だが、北村はこれがプロ通算7打席目で初安打。プロ初安打が満塁本塁打は14年10月2日梅田(西武)以来5人目で、新人では56年4月11日米田(阪急)67年6月6日槌田(巨人)に次いで3人目だ。北村は2回の犠飛と5回の適時安打を含めて6打点。ヤクルトの新人で1試合6打点は85年7月2日広沢以来2人目のタイ記録。

▽ヤクルト村上(5回に左中間席へ21号ソロ)「(逆方向で)良いホームランだったと思います。(北村の満塁弾による初安打に)うれしかったですね。これからがスタートだと思うので頑張って欲しい。(自身の初本塁打も)覚えています」

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