ウオーターシャワーが身に染みた。みんなが駆け寄ってきた。今季12球団最長5時間16分ゲーム。延長12回無死満塁、佐藤輝明内野手がプロ初のサヨナラ打となる犠飛で決着をつけた。

「これ以上ない形で回ってきたので、最低限という気持ちでいきました。気持ちで打ちました」

2ボールから、捉えたのはヤクルト田口の速球。右中間最深部へ運び、犠牲フライには十分な飛距離だった。「最高の結果だと思います。試合を勝ちで終わらせることができてよかった」。ヒットでもホームランでもない。それでも誇らしい。「前のバッターがつないでくれたので決められた」と、一丸となって戦った仲間に感謝しきりだった。

忘れられない光景がある。プロ1年目の21年9月4日の巨人戦。左翼へ伸びる大山の放物線に目を奪われた。逆転サヨナラ2ラン-。甲子園のネクスト・ボックスから見たそれは、かっこよかった。ナインにもみくちゃにされた背番号3の背中。お祭り騒ぎの甲子園。「うわっ、すごいなって…」。プロ野球の醍醐味(だいごみ)を教えてもらった夜だ。

自分もその歓喜を味わいたい。「サヨナラ打はいつか打ってみたい」と言ってきた。延長10回、自身15打席ぶりの安打となる右前打で視界も開けた。2試合ぶりに6番から5番に座ったゲームでプロ初のサヨナラ打。「遅くまで残っていただいて、その声援がパワーになりました」。午後11時半前のお立ち台で、ファンに感謝を込めた。

サヨナラ勝ちは7度目でチームは今季最長タイの9連勝。今季最長の6カード連続勝ち越しを決め、貯金も最多で08年以来15年ぶりの「23」に増やした。岡田監督は「いやいや、別に何とも思ってない。毎試合毎試合勝つためにやっているだけで、積み重ねですからね」と言った。積み重ねた末に、シーズン2度の9連勝は2リーグ分立後、球団初だ。夏の「長期ロード」9連勝も球団新記録。2位とのゲーム差を今季最大の7に広げたヒーローは「あざした! おやすみなさい!」と取材を締めた。これが猛虎だ。強い。【中野椋】

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