今季限りでマイクを置くロッテ名物アナウンス担当の谷保恵美さん(57)が、レギュラーシーズン最終戦を迎えた。

現役選手はもちろんだが、歴代OBにとっても、33年間アナウンスを務めてきた谷保さんは大きな存在だ。「魂のエース」として愛されてきた黒木知宏投手コーチ(49)は「レギュラーシーズンだけじゃなく、その先(CS)もその先(日本シリーズ)もコールやアナウンスが出来るように、我々は頑張っていきたい」と誓っていた1人だ。

親しみを込めて「たにほさん」ではなく、「やほさん」と呼んでいる。「僕は1年目の時に寮生活していて、やほさんと一緒に武蔵野線で球場(マリンスタジアム)に行ったり帰ったりしていたんですよ。そういう仲で関係性も近いところにいたので。単なるアナウンスとプロ野球選手の関係性じゃないくらいに僕は思っていますよ」。愛称「ジョニー」としてファンに愛された同コーチも力になった声だった。「33年休みなく続けてこられた偉業というものがね、誰も抜けないと思うんですけれども、やほさんの声が消えるのは寂しいなあって思いますね。あの声、あのアナウンスっていうのは、誰しも記憶に残ることなので、それは色あせることもない」。

ロッテ球団に90年に入社し、91年から場内アナウンスを担当してきた。昨年7月17日のソフトバンク戦では公式戦通算2000試合となるアナウンス界の“名球会”入りも達成している。「サブロ~~~~~」や「フク~ラ~~」など、独特な言い回しの美声は、プロ野球ファンにとっては必要不可欠な魅力だった。

福浦和也ヘッド兼打撃コーチ(47)は「ネクストからバッターボックスに行く時に声を聞いて、なんかスイッチが入るんですよね」と感謝している。選手としてコーチとして生涯ロッテの同士でもある。「引退試合の時もやっぱり最後も盛り上げてくれたのでね。あとはずっといろいろなところを見てくれていた。あの声が聞こえなくなるのは本当に寂しくなります」。谷保さん自身が著書などで「福浦」のコールが呼びにくいことを明かしていることには「福浦って自分でも言いづらいですからね」と笑った。

一方、トラブルなどでの対応力も選手やファンの記憶に鮮明に残っている。大塚明外野守備兼走塁コーチ(48)は少しほほ笑みながら思い出話に突入した。「大塚明選手、ユニホームが違いますよ」のアナウンスは忘れられない1場面だ。「シートノック中だったのよ。ビジターデーだった。オレが気づかずにずっとアップしていたんですよ。そうしたらみんなが『黙っておけよ』みたいな感じで、それを谷保さんに言ってね。シートノックのタイミングで言ってくれた。恥ずかしいってのはないけれど、間違えました…って感じだったことは、よく覚えているね。あれは良い思い出」。谷保さんの話をする人はみんな笑顔になる。これは共通点だ。【鎌田直秀】

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