オリックス山本由伸投手(25)が、5失点と苦しみながらも勝利投手になった。初回に3点先制されるなど7回116球を投げて10安打を許した。今季のレギュラーシーズンワースト4失点を上回る失点も、打線の奮起に救われた。5失点以上の白星は自身初。今オフにはポスティングシステムでメジャー移籍が見込まれる右腕。ネット裏に集結したメジャー9球団のスカウトからは「(年俸総額)300億円ぐらいになるよ」と声が上がった。

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紅林が決勝打を放った瞬間、ベンチの山本はぐっと両手を伸ばした。「野手の皆さんとリリーフのおかげでなんとか勝てたので、とにかく感謝しています」。快投で助けてきたエースが、仲間に助けられた。

3年連続で任された初陣。まさかの展開だった。初回、先頭荻野の打球が山本のグラブをはじいて内野安打となると、5安打を浴び一挙3失点。「1点でも失点を少なくなんとか抑えられてたら、もっと楽な展開になったかなと思う。しっかり3点取られたんで、切り替えて投げました」。いつもの笑顔も影を潜めたが、エースの意地は失わなかった。

2回からは0を並べ、6回も最少失点で踏みとどまった。6回で109球を投げたが7回の続投を希望。再び1点を失ったが、最後は併殺で切り抜けた。「全然いいボールがいってなかったですし、ボール球もすごく多かった。いろいろ苦労しながらのピッチングになりました」。苦しみながらも力を込めたからこそ、味方が救ってくれた。

プレッシャーのかかる場面でこそ真価を発揮する。2年連続のノーヒットノーランを達成した9月9日ロッテ戦には、大リーグの20人以上の関係者が大集結。ネット裏でスピードガンを手にしたスカウトは驚いた。「いつもは少し遅い直球が何球かあるんだけど、全てが150キロ台の素晴らしい球だった」。注目されるほどギアが上がる姿に、思わずうなった。

この日もピューティラGMが直接訪れたジャイアンツやヤンキースら9球団が視察。スカウトからは早くも「(総額)300億円もありえるよ」の言葉も飛び出した。周囲の注目度は増すばかりだ。初戦を取れば、パ・リーグでは日本シリーズ進出率100%。エースは「野手の皆さんが逆転してくれたことに感謝しかありません」。次は満足のいく快投でチームを助ける。【磯綾乃】