サイ・ヤング賞右腕が一石を投じた。

故沢村栄治氏を記念し、シーズンで最も優れた先発投手に贈られる「沢村賞」の選考委員会が30日、都内のホテルで開かれ、オリックス山本由伸投手(25)が3年連続3度目の受賞を決めた。選考はDeNA東との一騎打ちだったが、委員からはDeNAトレバー・バウアー投手(32)への称賛の声も聞かれた。

バウアーは来日1年目の今季、10勝をマーク。メジャー流の中4日で完投勝利を挙げるなど、鉄腕ぶりを発揮した。現在の日本プロ野球は先発投手が中6日でローテーションを回るのが一般的。分業制が進み、100球程度で降板することも多い。

堀内恒夫選考委員長は「目からうろこが落ちるとはこのこと。100球(で交代)はアメリカで160数試合を中4日で投げるにはいいシステム。日本はただそれをやみくもに持ってきて、1週間空けて100球。これじゃあ勝てる投手も勝てない。僕はもろ手を挙げて賛成してますよ、バウアーの投げる姿勢に。そういうものをやらないと、20勝投手なんて出てこない。ましてや200勝投手なんてもう夢。たくさん勝つにはたくさん投げないと。見習ってほしい」と、右腕の積極性を絶賛。バウアーがシーズン中に沢村賞をとりたいと話していたことについても「大変うれしい。日本のプロ野球の中でナンバーワンを決める賞なので、外国人、日本人は全く関係ない」と強調した。

平松政次委員は「非常に強気のピッチングで、見本としていい投手が入ってきた。難しいと思うが“右にならえ”になってほしい」。山田久志委員も「中6日、100球前後、6回7回で終了というこのシステムを、どこかで変えていく指導者、監督、コーチが出現してくれることをずっと期待している。まだ投げられると思う時でもシステムにはめて代えてしまう。だから後半の野球が少しつまらない。それをよしとしてしまうプロ野球になっている。それを覆すチームが出てきてほしい」と熱弁した。

一方で工藤公康委員は「アメリカではトミー・ジョン手術をする選手が多くなっている、減らない現実もある。もし中4日となれば、日本でもそうなってしまう可能性も少なくない。指導者をやった経験がある上では、長くプロ野球で活躍してもらいたい」と指摘。「沢村賞は投手にとって最高の賞なので、みんながそこを目指して、追いかけていけるようなシステムが今後できたら僕もうれしい」と話した。