日刊スポーツの名物編集委員、寺尾博和が幅広く語るコラム「寺尾で候」を随時お届けします。

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オリックス山本由伸のパ・リーグMVPが確実視されている。3年連続の受賞となれば、イチロー以来の快挙となり、米大リーグ移籍で海を渡る日本球界のエースに箔(はく)が付く。

もう1人、過去に3年続けてMVPに輝いたのが、山田久志だ。オリックスの前身で名将西本幸雄が率いた阪急ブレーブスで通算284勝を記録。今では考えにくい12年連続開幕投手にもすごみを感じる。

「イチローに、正尚(吉田)から、由伸に続くメジャーリーガーの誕生は、いかにオリックスが強くなったかを証明している。向こうから帰ってきた平野の貢献度も高いよね」

山田はコロナ禍の年を除いて、オリックスの臨時コーチを務めてきた。アマチュア時代に無名だった山本をプロ入りから見守った。先発転向の“潮目”にも指導している。

今シーズンは、山本が記録を達成するたびに、「山田」の名前が引き合いに出された。例を挙げれば、球団で3年連続15勝以上は山田以来、44年ぶりだった。

「今年はここ数年では最も良くないシーズンだった。日本シリーズもフォークを使いすぎだった。そんなにストレートを投げることを怖がらなくてもいいとみていたが、よほど真っすぐが不調だと思っていたのかもしれないね」

メジャー複数球団からオファーを受ける山本には、「打力のあるチームに行けば相当勝つはずだ」と分析する。そして、羽ばたく後輩に自身の処世訓を“はなむけ”に送るのだった。

それが「若き時代の自分が教わったマウンドでの立ち振る舞いだった」という、禅からきた言葉の『おいあくま』だ。

 

「お」…怒らず

「い」…威張らず

「あ」…焦らず

「く」…腐らず

「ま」…負けるな

 

山の頂に立った人間は慢心に陥りがちだ。偉くなったと勘違いすれば、おごりも生じる。煩悩を消し去って、おのれに勝つ。修羅場をくぐってきた男は「自分を見失いかけたときに思い浮べた」と自分の姿を鏡に映して戒めてきたつもりだったという。

「あれぐらいの球速で真っすぐを投げるピッチャーはいくらでもいる。しかも制球が良すぎるから狙われる。でも、どの球種も一級品だから勝つはずだ。その意味では、打線の援護に、受け手(捕手)もカギを握っている」

山田は阪急・オリックスOB会長で、最高峰と認められる沢村賞の選考委員でもある。「またしてもエースが流出するのは寂しいが、おいあくまの精神で、日本の力を見せつけてほしい」とメジャーでの大活躍を願った。(敬称略)