「虎の村神様」が球史に名を刻んだ。阪神村上頌樹投手(25)が28日、都内で開催された「NPB AWARDS 2023 supported by リポビタンD」に出席し、セ・リーグ最優秀選手賞(MVP)と最優秀新人賞に選出された。ダブル受賞は90年野茂英雄(近鉄)以来3人目でセ初の快挙で、年俸750万円から日本一に貢献した右腕が光り輝いた。パで3年連続MVPを獲得し、メジャーに挑戦する同い年のオリックス山本由伸投手(25)に負けじと、球界を代表するエースになる。

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スターだらけの表彰会場で、背筋を伸ばした。MVP受賞者が発表され、村上がスポットライトを浴びた。「他にもすごい選手がいる中、とても光栄です。来年もとれるように頑張ります」とマイクの前で誓った。パ・リーグMVPの山本と記念写真に納まると、25歳らしい笑みがこぼれた。

90年の野茂以来33年ぶりとなるMVPと新人王のダブル受賞。球界の大先輩の印象を問われると「トルネードの人」と白い歯を見せた。スーパーレジェンドに続く快挙に「びっくりです」と目を丸くした。前年まで未勝利投手のMVPも新人以外では史上初で、近本、大山、岩崎ら同僚を抑えての栄誉。「自分はザキさん(岩崎)かなと思っていた」と本音も明かした。

過去2年は、最多勝や最優秀防御率を獲得したウエスタン・リーグ表彰でNPBアワードに出席していた。「来年こそは1軍の戦力に」と腕を振り続けてきた。推定年俸は1年目が720万円で、2年目と3年目の今季は750万円の男が特大の“下克上”。岡田監督も「まさかな、2月にそんなん思えへんやん。えらい人生変わってしもうたな、あいつもな。頑張った結果やからな」と驚きを隠さず褒めたたえた。

全ては今季初先発した4月12日の巨人戦から始まった。「『ああ投げれば抑えられる』と分かったので、あの試合はいい自信になりました」。7回完全投球は1年を通してエネルギー源となった。先発ローテーションに定着して10勝6敗。防御率1・75で最優秀防御率のタイトルも獲得。1月に青柳と行った自主トレも「フォームはそこから変えてない」と飛躍のきっかけになった。

もちろん、「一発屋」で終わるつもりはない。同じ98年生まれの同い年で、日本シリーズでも投げ合った3年連続投手4冠の山本と比較し「まだまだ実力も足りてない」と引き締める。「もっともっと肩を並べられるようにしていかないと。(山本は)複数のタイトルを連続で取っているので、自分も複数のタイトルを何年も連続で取っていけるようにしたい。1年だけじゃなくて、複数年結果を残さないと意味がない」。慢心はない。球団初の連覇へ向け、高みだけを見つめる。【中野椋】

 

◆村上一問一答

-去年も来たNPBアワードだが

「去年は(2軍表彰で)朝の方の受賞だった。今回は夜。1軍で表彰されるのは光栄です」

-新人王は阪神森下を抑えて

「あいつから『3年目やからええやろ、1年目に譲れ』と言われたけど、自分が勝ち取ったのでよかったです」

-オリックス山本とも話を

「会見、頑張ってと(笑い)」

-タイトルは今後も

「一番取りたいタイトルは防御率。そこは連続で取っていけるように」

-球団では03年井川、05年金本以来のMVP

「05年は7歳くらいなんで、めっちゃ記憶にあるわけではないですね」

-オフは表彰、イベントラッシュだがスーツは足りている

「ギリギリです。誰かしらに(新品のスーツを)頼みたいです(笑い)」

 

▼3年目の村上がMVP、新人王を獲得。MVP、新人王のダブル受賞は80年木田(日本ハム)90年野茂(近鉄)に次ぎ33年ぶり3人目。過去2人は1年目で、2年目以降、セ・リーグの選手では初となった。村上はベストナインは獲得できなかったが、ベストナインを逃してMVPは17年サファテ(ソフトバンク)以来15度目。15度のうち野手は1度(48年の南海山本)で、投手14度のうちサファテのように救援投手が5度。先発投手では99年の野口(中日)と工藤(ダイエー)以来24年ぶり。同年のベストナインは上原(巨人)と松坂(西武)だった。