後輩複数選手へのパワーハラスメント疑惑が浮上した楽天安楽智大投手(27)が、保留者名簿から外れ、自由契約となった。30日、楽天モバイルパークで取材対応した森井誠之球団社長(49)が、来季戦力として契約する権利を持つ保留者名簿から外したことを明かした。

「これまで報道なされていた事象について、ほぼ事実と判明しました。本人としても大変申し訳ないと反省の弁を何度も述べています。本日提出期限だった保留選手名簿への記載をしない結論に至りました」と説明した。パワハラ被害を受けたのは10人、見た、聞いたのは約40人とした。24年度での再契約の可能性はない。球団は謝罪の場を設けるサポートはしていく。29日に森井社長が安楽に自由契約にする旨を伝え、安楽は「かしこまりました」と返答したという。

この日はNPBへの同名簿提出期限で、安楽は12月1日に自由契約選手として公示される。ルール上は名簿から外れた場合でも楽天を含む全球団との契約は可能だが、異例の措置となった。

安楽を巡っては、暴言や人格否定を日常的に繰り返すといった「パワハラ被害」を訴える声が、複数の後輩選手から上がっていた。球団は本人に自宅待機を命じ、25日に予定されていた契約更改は無期限の延期。この日までに複数回のヒアリングを行っていた。

また、球団は現在在籍する全選手、スタッフら約100人に対してパワハラ行為を受けたか、見たかなど任意のアンケートを送付し、26日が回答期限だった。騒動を受け、宮城・塩釜市とのパートナー協定締結式が延期となり、選手会納会といった行事が中止など影響が出ている。

安楽は中継ぎの柱として今季57試合に登板し、3勝2敗、10ホールド、防御率3・04をマーク。昨季は52試合、21年は58試合と3年連続で50試合以上に登板していた。

 

◆保留者名簿 球団は毎年11月30日以前にコミッショナーに次年度選手契約締結の権利を保留する選手を全保留選手名簿として提出する。上限は70人。名簿は12月2日(今年は12月1日)に公示される。記載された選手は外国のいかなる球団を含め、他の球団と選手契約に関する交渉を行うことが禁止される。記載されない選手は同日に自由契約選手として公示される。期日までに契約合意に至らなかった外国人選手が自由契約選手として公示されるケースもあり、所属していた球団と再契約することは可能。DeNAが残留交渉を進めるバウアーも自由契約となることが30日に発表された。

◆安楽智大(あんらく・ともひろ)1996年(平8)11月4日、愛媛県生まれ。済美では2年春夏に甲子園出場。14年ドラフト1位で楽天入り。15年10月5日ソフトバンク戦でプロ初登板初勝利。21年からセットアッパーに定着し、3年連続で50試合以上に登板。通算231試合、18勝21敗、3セーブ、50ホールド、防御率3・59。186センチ、87キロ。右投げ左打ち。今季推定年俸3700万円。

◆安楽のパワハラ報道 後輩選手への暴言や人格否定などが日常的に行われ、食事会の誘いを断ると、その日の深夜に執拗(しつよう)に電話をかける行為もあったとみられる。球場のロッカールーム内では若手の衣服を脱がせて下半身露出を強要し、笑いものにしていたという証言もある。すでに退団したある選手は「(頭部を)平手打ちされて、むち打ちみたいになった。その後の練習にも支障をきたし、精神的な苦痛を受けた」と明かしていた。

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