<オープン戦:巨人6-9広島>◇10日◇周南

 大砲は静かに時を待っていた。嗅覚(きゅうかく)を研ぎ澄まして。同点で迎えた3回無死一塁、巨人李承■内野手(32)は、広島篠田の投じた2球目をフルスイング。中堅横のスコアボードに直撃するド派手な2ランを放った。ガッツポーズもない。淡々とダイヤモンドを回った。「毎試合最善を尽くしていたが、結果が出なかっただけで(状態は)問題なかった。今も大事だが、開幕の方が大事」と気を引き締めた。

 発奮して臨んだ1戦だった。前日9日、伊原監督代行が「アルフォンゾは一塁、三塁もやらせます。スンちゃんと競わせますよ」と発言。李は「(ライバルは)相手じゃない。自分はしっかりやるだけ」とかわしたが、燃えないはずがなかった。この日の2ランを含む3打数3安打2打点の活躍は意地でもあった。

 辞退したWBC韓国代表チームの活躍が、心の支えになっている。韓国は第1ラウンドを1位で突破。「一緒にやりたい気持ちはあったが、後輩たちには私が今年に懸ける気持ちが強いことをわかってほしい。最後まで巨人の一員でやっていきたい」と、固い決意をにじませた。試合前にはロッカールームでヘッドホンから流れる音楽に耳を傾け、集中力を高めた。「まだレギュラーは安泰じゃないが、開幕スタメンに入れるように頑張りたい」。地に足を付けた主砲が、まずは4月3日広島との開幕戦で大暴れする。【久保賢吾】※■は火へんに華

 [2009年3月11日8時2分

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