<日本シリーズ:日本ハム3-4巨人>◇第1戦◇10月31日◇札幌ドーム

 日本シリーズという大舞台で、巨人原辰徳監督(51)の采配がズバリはまった。1点リードの7回表、無死一、三塁。初球だった。木村拓はスクイズバントを空振りした。しかし、三塁走者の谷はスタートしていない。日本ハムバッテリーが混乱している間に、一塁走者の阿部はまんまと二塁を陥れた。チャンスは無死二、三塁へと広がった。バントをわざと空振りさせ一塁走者を進める「偽装スクイズ」が見事に成功した。

 “迫真の演技”を見せた木村拓は空振り三振に倒れたものの、続いて登場した「代打の代打」李承■が中前へ適時打を放ち、結果的には決勝点となった4点目が入った。偽装スクイズについて、原監督は「スクイズのサインを出したら空振りしたから『痛ッ』と思ったよ」と、とぼけたものの、伊原ヘッドコーチは「いいところで監督が指示を出してくれたよ」と、してやったりの表情を浮かべた。

 ひそかに準備をしていた。ミーティングで偽装スクイズの可能性があることを選手に伝えていた。一塁走者は阿部で、見破られればアウトは確実だったが、日本ハムの捕手は途中出場のルーキー大野。相手の経験不足も頭に入れた、絶妙なタイミングでのゴーサインだった。

 81年の「後楽園シリーズ」以来となる日本ハムとの日本一決戦。グラウンドで行われた勝利監督インタビューで、原監督は右翼席の一部に陣取った巨人ファンの声援に、帽子を取って一礼した。「日本シリーズ独特の雰囲気の中、どっちに転んでもおかしくない試合だった。巨人のリズムで戦えたのが大きかった」。流れを読み、勝負どころで一気に仕掛ける。81年には新人ながら2本塁打を放って日本一に貢献した原監督だが、今回は冷静かつ大胆な采配を見せ、巨人が大事な初戦をものにした。【広瀬雷太】※■は火へんに華

 [2009年11月1日9時56分

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