<巨人6-7阪神>◇16日◇東京ドーム

 いよっ、選手会長!

 阪神鳥谷敬内野手(28)が東京ドームに2本のアーチをかけた。初回に先制の3号ソロを放ち、6回にはオープン戦単独トップとなる勝ち越しの4号3ラン。城島、ブラゼルの1発も呼び込み、1試合4発の空中戦で宿敵巨人を粉砕だ。前夜は坂井オーナーが激励会で異例の謝罪あいさつを行ったが、一丸となったナインはもう開幕モード。最後は追い上げられてヒヤヒヤしたけど、シーズンもこの調子で頼んまっせ!

 2発目の花火を打ち上げ、三塁ベンチ前でナインから笑顔の出迎えを受けた。鳥谷はニヤニヤしたブラゼルに両肩をもまれ、思わず照れ笑いした。「シーズンに入ってからだったら良かったんですけど…」。

 初回2死。先発に転向した天敵、巨人山口をいきなり打ち砕いた。カウント1-2。真ん中140キロ直球をコンパクトに強振した。弾丸ライナーが右中間最前列にズドン。「入るとは思わなかった」。先制ソロだ。さらに同点に追いついた6回2死一、二塁。今度はマイケルの外角チェンジアップに逆らわず、しっかり待って左翼席まで運んだ。「変化球をしっかり逆に打てて良かった」。常に反省を忘れない男も納得の3ラン。2発4打点の大活躍にチームは勢いづいた。

 前日15日、大阪市内のホテルで行われた「阪神タイガース激励会」。選手を中心とする球団関係者196人の前で、壇上の坂井オーナーが前代未聞の謝罪あいさつを行った。「私の言動やフロントの対応において、選手のみなさんに戸惑いや不信感を与えたことを謝りたい。許して下さい」。チームの功労者に対する処遇、勝利にこだわる姿勢への不満。それらに対する“おわび”だった。

 球団トップの謝罪から一夜明け、一致団結を生むのか、それとも新たな不安材料になるのか。その影響に注目が集まる中、前夜「自分がどうこう言えることじゃない」と口にした新選手会長が、プレーでナインを引っ張った。グラウンドでやることは変わらない-。そんな思いをにじませた。

 純粋に野球が好き。それは選手会長就任後も変わらない。2月の沖縄キャンプ第1クール。城島と食事を共にした。もちろん、選手会長としてコミュニケーションをはかる意味合いもあったが、もっとうまくなりたいという思いが根底にある。「話す機会があれば自分の幅も広がる。絶対に野球の話になるし、いろいろ参考になることがあるんで」。普段はクールでも、自身の打撃を解析した連続写真を見ると、目が輝く。向上心を忘れたことはない。

 現在は昨季終盤から固めている、軸回転を強く意識したフォームを追求中。スイング時のブレが少なくなり、確実にレベルアップを続けている。自身を中距離打者と位置づけ「今年も試合で(1発を)狙って打つことは1回もない」と公言する。それでも力強く2発を放つのだから、首脳陣の信頼は深まるばかりだ。好不調の波も小さくなり、オープン戦4本塁打は両リーグトップ。2010年初のG倒も導いてみせた。「負けるよりは勝った方が良いですから」。3・26開幕戦へ虎の中心に立つ男が、いよいよエンジンをふかし始めた。

 [2010年3月17日11時41分

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