<西武4-6日本ハム>◇29日◇ハードオフ新潟

 日本ハム矢貫俊之投手(26)が、プロ2年目で初勝利を飾った。首位西武打線を相手に5回1/3を5安打2失点。9点の援護を受けながら4回途中降板した前回23日のソフトバンク戦と同じ轍(てつ)は踏まず、先発4度目の正直で記念すべき1勝を勝ち取った。チームも4連勝で、最大14あった借金を「2」とした。

 背中を丸めながら、祝福するチームメートと手を合わせた。190センチの矢貫がおどおど、初めての歓喜のハイタッチを繰り返した。最終9回に2点差に迫られ、なお2死満塁。一発逆転のピンチを「自分の初勝利のことは忘れてました」と無心で見届けた。ハラハラドキドキの先に、節目が到来した。先発4試合目で、ようやく悲願を果たした。

 成り上がりの野球人生の第1歩になった。宮城の強豪、仙台育英では補欠。1度もベンチ入りできず3年間を終えた。01年センバツ準V時はアルプス席の太鼓係。常磐大へ進み才能が開花して三菱ふそう川崎入り。しかし08年で休部し、同チーム最後のプロ野球選手として厳しい世界へ身を投じた。好投続きが報われなかったが「ポンポンいくタイプじゃない」という苦労人らしい記念星になった。

 昨秋、転機があった。1軍がポストシーズンを戦っているさなか、米アリゾナ州での教育リーグへ参加した。大リーグドラフト全体1位指名のナショナルズ・ストラスバーグ投手ら、本場のハングリーな若手らとともに出直した。現役続行へいまだ意欲を見せる前ジャイアンツの藪恵壹とも対面。同リーグに参加していた阪神西村とともに3人でパワースポットで有名なセドナを訪ねた。藪から生きざま、考え方などを知り、感化された。大きなパワーを注入して臨んだ2年目で、まずは第1段階をクリアした。

 次の目標ができた。「チームを救えるような投手になりたい」。直球にカーブ、スライダー、フォークと少ない球種を磨いてきたオーソドックスな本格派右腕。長い年月をかけて投手道を丹念に極めてきた矢貫の執念が、花開いた。【高山通史】

 [2010年6月30日8時44分

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