リンだ、リンだ、林威助だ。黒虎打線は8番だって怖いんです。阪神林威助外野手(31)が4年ぶりとなる1試合2本塁打をかっ飛ばした。2号ソロで勢いに乗り、5回はビッグイニングを締めくくる3ランだった。2打席連続となるアーチは、左腕篠原から放った価値ある1発。自己最多5打点と荒稼ぎした林威助が大勝を演出した。

 打席に立つ前に勝負はついていた。林は、次打者席で城島の粘りを目に焼きつけた。ファウル8球を含めて全12球。「城さん(城島)が前で粘ってくれていて、後ろでしっかりとタイミングを取れていた」。小杉の持ち球を観察して、真ん中に入った131キロのフォークを右翼席にぶち込んだ。「ピッチャーが疲れたんじゃないですかね?」。

 今季2号で一気に乗った。5回2死二、三塁では左の篠原。代打のコールはない。「最近は左に立ってないけど、甘い球が来たので思い切っていった」。再び右翼席に2打席連続の3号3ラン。不利な左対左で初球スライダーを仕留めて「イケイケの状態で勝負してくれる様子だった。完ぺきだった」と自画自賛。1試合2発は06年6月17日オリックス戦以来4年ぶり2度目。7回無死一、三塁では左犠飛も放ち、8年目で初の1試合5打点の活躍だ。

 将来を期待された左の長距離砲も背番号と同じ31歳になった。「若くはないので」と自覚する。7月28日横浜戦の後半戦開始からは代打起用などで10打席連続無安打。「代打やちょっとスタメンで使われて(交代して)悩んだりした」。新しい試みとしてバットのグリップにテーピングを巻いた。スタンスを狭める新フォームにもトライした。簡単に効果は出なかった。結局は元に戻したこともある。それでも「もっともっとやらないといけないし、今よりいいものがあれば変えていこうと思う」。それが回り道でもチャレンジをやめれば、すべてが終わる。

 苦しみを乗り越えて、15日ヤクルト戦から先発3試合すべてで安打を記録。持ち前のパンチ力も発揮し始めた。新生ダイナマイト打線の「8番」は浅井、桜井、藤川俊らライバルがひしめく。「いっぱいいい選手がいるので。左投手を打って、いいアピールになった。1本出れば、気持ちは変わるし、スタメンで使ってくれる」と意気込んだ。

 この日は2位巨人が敗北。ヒーローインタビューで水を向けられると「巨人が負けてくれた方がうれしいけど、自分たちの試合を戦っていきたい」。もう未来の中軸候補ではない。ただ5年ぶりの優勝を狙うこの瞬間、チームに貢献できる打者になる。

 [2010年8月19日11時31分

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