<西武5-3楽天>◇29日◇西武ドーム

 西武が逆転サヨナラ勝ちで連敗を7で止め、2位に浮上した。1点を追う楽天戦の9回1死一、二塁で上本達之捕手(29)が右越え3ランを放った。負ければ3年ぶりの8連敗で、首位ソフトバンクに1・5ゲーム差をつけられる一戦で、8番打者が大仕事を果たした。

 もう見納めとなる赤いユニホーム。その中心に上本がいた。歓喜のホームを踏んだ瞬間、喜びを爆発させたナインの祝福にもみくちゃにされた。冷水タンクの氷水を頭から浴びても、熱気は冷めない。「連敗が止まったので本当によかったです」。ずぶぬれのヒーローが、9試合ぶり白星の重みを全身で味わった。

 長かった。7まで続いた連敗を、土壇場で止めた。1点を追う9回1死一、二塁。「強く打つことだけを考えました。中途半端で後悔はしないように」と楽天の抑え小山の高め直球をフルスイング。恵まれた体格から繰り出した力強い打球は、一直線で右中間席に消えた。

 責任を感じていた。連敗は、20日の日本ハム戦から始まった。ダルビッシュを攻略して勝利目前の9回に、13年目飯山にプロ1号となる同点3ランを浴び、延長で敗れた。捕手として、流れを大きく失う結果になった1球に、自問自答し続けた。「ずっと引きずってたんで、これで吹っ切れます」。8回に1度は逆転された分も、バットで取り返した。連敗中は難しい顔だったが、ようやく持ち前の明るい笑顔が戻った。

 起死回生の逆転サヨナラ3ランは、集まったOBをも興奮させた。太平洋クラブ時代の復刻ユニホームを着用しての最終戦。ゲスト参加したOB13人を代表して東尾修氏(60)は「ベンチ裏で見てたみんなもビックリした。こういう素晴らしい試合を選手のみなさん、ありがとう」と試合後にあいさつした。場内VTRで「ライオンズでもっともどん底で、もがき苦しんでいた時代」と形容された70年代を支えた大先輩に見守られ、劇的な逆転サヨナラで再スタートを切った。

 首位に0・5ゲーム差の2位に浮上。渡辺監督は「先輩方が見に来てくれて、なんとか連敗を止めたいと思ってた。ターニングポイントになる気がする。残り少ないけど、いい試合をしていきたい」と決意を新たにした。低迷した太平洋時代同様に、過去の「弱さ」とは決別。残り22試合、ライオンズの強さを歴史に刻みこむ。【柴田猛夫】

 [2010年8月30日11時54分

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