両親のために、最高のシーズンにしてみせる。ソフトバンク大隣憲司投手(26)が14日、亡き父と残された母のために今季、自己最高成績を収めることを誓った。6日に父繁さん(享年69)が急性心不全のため他界。葬儀などで離脱した分を取り戻そうと、この日は休日返上で練習を行った。左腕が悲しみを大きな力に変える。

 大隣が、悲しみを振り払うように休日返上で汗を流した。冷たい雨が降り注ぎ、気温が6度前後だったキャンプ地。生目の杜運動公園の室内練習場で、黙々とキャッチボールやランニングを行った。悲しむのは、もう終わり-。父親のためにも前だけを向いていく、遠投で投じた力強い球筋にその思いが表れていた。

 「自分が勝つことしかないと思っているので」。

 天国の父親は、自分が悲しむことより必死に白星をつかみにいくことを望んでいることは分かっている。そして、自分が勝つことが、愛する夫を亡くした母親の敏子さんのためになることも。

 「母親も今はまだ気が張っているところだと思う。心配は心配です」。

 葬儀では涙を流さず父親を送り出した。だが京都から宮崎へ戻る途中、告別式で気丈に振る舞っていた母親の姿が脳裏に浮かぶと目頭が熱くなった。

 「(母親が)悲しむのはこれからだと思う」。

 生まれた時は8カ月の早産だったため体重は1890グラムの未熟児で、出生から間もなくは透明の保育器の中で育った。そこから両親はプロ野球選手に育ててくれた。だからこそ人一倍、両親への感謝の気持ちは大きい。福岡と京都で離れて暮らすだけに、自分が活躍する姿をテレビや新聞で見せることが、母親を元気にさせることだと思っている。

 「まだ親を安心させられるような選手ではないので」。

 ドラフト1位で入団し、2年目の08年には11勝をマークした。だが飛躍が期待されていた09年に10敗を喫し負け越すと、昨季も4勝9敗と大きく負け越し。エース級の活躍を父親に見せることができなかった無念さがあるだけに、今季は何が何でも自己最高の成績を収めるつもりだ。

 「B組(2軍)でしっかり調整していく。まずは体をしっかりつくらないと。仮にオープン戦に間に合わないとしても」

 インフルエンザでキャンプインが遅れ、ただでさえ焦りはあるが、まずはしっかり足元を固めるつもりだ。無理やりにでも焦る気持ちを抑えているのは、今季にかける並々ならぬ気持ちの表れ。悲しみを乗り越えた左腕が、愛する両親にたくさんの白星を届ける。

 [2011年2月15日11時23分

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