<西武3-5日本ハム>◇29日◇西武ドーム

 注目の二刀流ルーキーが鮮烈デビューだ!

 プロ野球は29日、セ・パ両リーグが同時開幕。日本ハムの二刀流ルーキー大谷翔平投手(18)は、西武戦(西武ドーム)に「8番・右翼」で先発出場し、4打数2安打1打点と鮮烈なデビューを飾った。5回の第2打席でプロ初安打となる右翼線二塁打、続く6回2死二塁では右前打でプロ初打点をたたき出した。2リーグ制後、開幕戦で2安打した高卒新人は、60年矢ノ浦(近鉄)に次いで2人目。華々しく、力強く第1歩を踏み出した。

 歴史的な夜だ。敵地とは思えない「大谷コール」に、照れながら帽子を取った。手には初安打の記念球。13年の開幕戦は大谷のためにあった。

 大谷

 すごくうれしかったですし、勝ててよかったです。両親や(花巻東の)チームメートにメールをもらったり、応援してもらっています。ファンの方の声援もありがたいですし、感謝したいです。

 鮮烈デビューの幕開けは同点の5回。西武岸の137キロ直球を右翼線に運びプロ初安打の二塁打とした。3回の初打席は見逃し三振で洗礼を浴びたが、これでスイッチが入った。「2打席目は積極的に」と強気に振り抜いた。

 続く6回2死二塁では、127キロのチェンジアップを右前へ運び、初打点。1点勝ち越した直後だっただけに、「得点に絡んで貢献できたかな」と、喜びはプロ初安打より上だった。7回の守備では、ファウルゾーンへの飛球に体を反りながら長い手足を伸ばしてジャンピングキャッチと、野手で躍動した。

 栗山監督は「天真らんまんにいつも通りやってくれれば、野球の神様はほほえんでくれる」と送り出した。球団史上初となる高卒新人の開幕戦複数安打、初打点。野球界としても打点を挙げたのは、60年矢ノ浦(近鉄)以来53年ぶり2人目の快挙だった。

 前日28日はイースタン・リーグ西武戦(鎌ケ谷)に登板、1軍宿舎まで約2時間半をかけて大移動した。先輩と同乗した大谷だが、すぐに眠ったという。この日もフリー打撃後、ポールから中堅の間をダッシュする投手メニューをこなした。思わずサンダル履きで出ていってしまうほどの慌ただしさ。二刀流挑戦の過酷な現実。それでも、球団関係者やチームメートが弱音を聞いたことはない。

 日本ハム入団まで気持ちが揺れ動いた昨秋。周囲の中傷も耳に届いた。「オレが守る」と言ってくれたのが栗山監督だった。出会いは高校2年。左太もも裏に肉離れを抱えながら夏の甲子園のマウンドに上がったが、帝京に敗れた。当時スポーツキャスターだった栗山氏は、その試合に感動。取材活動とは関係なく、神戸市内にある花巻東の宿舎を訪れ、バスから降りてくるナインに無言で一礼した。言葉は交わさなかったが、栗山氏の姿は大谷の心に刻まれた。

 1年半後、同じユニホームを着ることになった。「オープン戦で結果が出ないときも、先輩たちもいる中で、それでも使ってもらった。何とか打ちたかった」。バットに感謝の思いを込めた。満点デビューも魅力はこんなものではない。投手登録なのだから。「(この経験を)自分の中でつなげていきたい。投手でも打者でも、やっていきたいです」。球界の宝の可能性は、無限に広がっている。【本間翼】