<日本ハム7-2ロッテ>◇14日◇札幌ドーム

 復帰打席でそのすごさを知らしめた。日本ハム大谷翔平投手(19)が、5-2の7回1死二塁で代打で登場し、本拠地初アーチとなる2号2ランを放った。右頬の骨折で4試合ぶりの出場。プロ初本塁打を放った10日の楽天戦に続く2試合連続の1発をバックスクリーン左に運んだ。高卒新人の代打本塁打は23年ぶり。高卒新人の2戦連発は93年の松井秀喜以来だ。

 規格外ルーキー大谷は、いつだって、ファンの想像の上をいく。顔面に打球が直撃し、右頬を骨折してからわずか3日。7回1死二塁の好機に代打で打席に立つと、バックスクリーン左へ125メートルの本拠地初アーチをたたき込んだ。「チャンスだったので、逆方向を意識しました。自分のスイングができました」。痛みの残る右頬を、くしゃっとさせて笑った。

 この日からチームに合流したばかりだった。ロッテ大谷の初球137キロ直球を見逃すと、5球目には再び直球を空振り。「最初、甘い真っすぐを見送って、どうしようかなと思った。(空振りも)ボールの下を振っていた。恐怖心もないかなと不安だった」。ブランクの影響は、少なからずあった。

 1度もバットに当たらないままフルカウント。だが、ここからが非凡だった。直球で追い込まれたことで「またくるかなと思った」。狙いを定めた外角143キロのストレート。今度は真芯で捉えた。右翼へ引っ張ったプロ初アーチから出場2戦連発となる1発は、広い札幌ドームの中堅左まで飛んでいった。

 欠場した3試合で、チームは3連敗を喫した。テレビで観戦して、悔しさがこみ上げた。「自分の不注意で迷惑をかけた。大事なベンチの1枠を空けてしまって、申し訳なかった。その分取り返せるようにと思いました」。たった一振りで、その思いを結果につなげた。栗山監督も「褒めたかないけど…、素晴らしかったね、今日は」と目を細めた。

 かむと患部が痛むため、食事は麺類中心。丸1日寮で静養した前日13日は、大谷流の“超回復”にあてた。練習前、三木内野守備コーチに明かした。「たくさん寝たからすっきりしました」。睡眠は、二刀流で疲れた体を蘇生させる最高のリフレッシュ法。幼少時は乗り物に乗ればすぐにコロッと寝てしまう子で、ぐずると車に乗せるのが大谷家のルーティンだった。父徹さんは「昔から寝ることは得意中の得意。(高校時代は)たまに実家に戻ってきたら、起こすまで寝ていた」と証言する。休養をプラスにとらえ、しっかりと骨休めができた。「ボールが当たった時はツイてないなと思ったけど、今日こういう結果になって、まだツキがあると思った」。

 この日はチームスポンサーでもあるサッポロビールのサンクスマッチ。一緒にお立ち台に上がったケッペル、小谷野には「黒ラベル」1年分がプレゼントされたが、未成年の大谷にはジュースが用意された。「(プロ野球人生は)まだまだ始まったばかりなので。技術的にもそうですし、精神的にも強くなっていければいいです」。高卒1年目のまだ19歳。大谷はいつだって、想像の上をいく。【本間翼】

 ◆ロッテ大谷「いい打者に違いないので、全力で投げましたけどコントロールミスが出た。あの1球は足を上げて投げるかクイックで投げるか悩んだ結果、力を入れようと足を上げてしっかり投げた球だった。打たれた瞬間すごい音がして、完全にいったなと思った。知らないうちに僕も大谷君を意識してた部分が少なからずあると思う。最初投げてもピクリとも動かなかった。どの球種を待ってるか分からなくて不気味というか、嫌な感じがした」