<日本ハム2-7ソフトバンク>◇18日◇帯広

 先発の駒不足に悩むソフトバンクに救世主が誕生だ。育成出身のエディソン・バリオス投手(24)が、初登板初先発で初勝利を手にした。背番号7の右腕は、母国ではネズミの仲間、カピバラを食べていたという「カピバラ男」。5回7安打を許しながら2失点と粘った。打線も12安打7得点で援護。連敗阻止でクライマックス・シリーズ(CS)圏内の3位を死守した。

 左翼席からのバリオスコールに手を振ると、慣れたような日本流のお辞儀で応えた。育成契約を経て復活した右腕は大仕事をやってのけると、興奮気味にまくし立てた。

 「本当にうれしい。やっと挙げられた1勝なので。結果的に勝つことが一番の目標だった。積極的に向かっていくピッチングができたのが良かった」

 地方球場、さらに雨上がりのマウンドと初登板には酷な状況。それでも不安定な足元は、雁の巣で予行演習済みだ。2回に中田にチェンジアップを左翼席に運ばれ、逆に燃えた。「次は絶対に抑えてやるという気持ちだった」。再び対戦した3回2死一、三塁では、日本で磨いたフォークで空振り三振。来日後に覚えたカットボールとツーシームも要所で効いた。内角を突く強気な投球で、5回2失点にまとめた。

 昨年6月に右肘の靱帯(じんたい)再建術、いわゆるトミー・ジョン手術を受けて長いリハビリに突入。1年以上かけて実戦復帰した。7月末で退団した元エースの斉藤和巳氏とは、リハビリをともにした。「持ってるものを全部出してこい」とエールを送られていた。今も球数制限がある中で、88球に魂を込めた。

 7月31日の支配下登録に合わせ、西戸崎寮を出て家族と生活を開始。生後1歳1カ月の愛息が、パワーの源だ。つづりは違うが、同じエディソン(Edixon)と名付けたほど愛情は深い。「今まで離れていたが、そばにいるし野球に集中できる。いい時期に来てくれた」。母国の両親とも「毎日のように連絡を取り合ってきた」といい、最高の報告が届けられそうだ。

 元ヤクルト、阪神のパリッシュはワニが好物で「ワニ男」と呼ばれたが、バリオスは母国でカピバラを食べていた「カピバラ男」。ベネズエラから来日し、関西独立リーグからNPB入りした苦労人。ソフトバンクでの初登板を「大きな1歩だけど、ここで終わりじゃない。ひとつの通過点に過ぎない」と位置づけていた。

 球団で背番号7の投手は47~49年の岩本信一以来。「負けられない試合が続くが、もらったチャンスはチームに貢献したい」。摂津以外は安定感を欠く先発陣を救う存在になってみせる。【大池和幸】

 ◆エディソン・バリオス(Edison

 Barrios)1988年10月11日、ベネズエラ生まれ。アルベルト・スミス高出身で、同国のサマー、ウインターの両リーグでプレー。11年に関西独立リーグ・神戸入り。同7月にソフトバンクに入団したが結果が出ず、昨年1月から育成契約を結んでいた。183センチ、82キロ。右投げ右打ち。

 ◆主な背番号1桁の外国人投手

 ホークスでは、南海時代の60~65年スタンカが背番号「6」。バリオスの勝利は、球団では65年10月10日阪急戦(西宮)スタンカ以来48年ぶりの背番号1桁外国人による勝利。なお南海ではほかに、59、60年に在籍したサディナが「2」をつけ計12勝。他球団では、阪神でバッキーが62~68年、キーオが87~90年にそれぞれ「4」を背負い、エース格の活躍を見せた。

 ◆カピバラ

 齧歯(げっし)類カピバラ科。南米アマゾン川流域などに生息するネズミなどの仲間。体長1メートル以上、体重50キロ以上になる。全身を硬い毛で覆われ、足の指の間には水かきがある。群れで行動し、草食性で水草などを食べる。寒さに弱く、温泉に入浴させる動物園もあり、カピバラが温泉でくつろぐトヨタのテレビCMも。ベネズエラでは食用として開発されている。