2年連続で公言してきた“うそ”が、ようやく“まこと”になった。日本ハム中田翔内野手(24)が3日、札幌市内の球団事務所で契約更改交渉に臨み、6500万円増となる年俸1億5000万円(推定)でサインした。外野手で初のベストナインに選ばれるなど、4番として実績を重ねた今季。高卒野手としては、球団史上最速となる7年目での大台突破で、念願だった1億円プレーヤーの仲間入りを果たした。

 会見場に現れた中田の顔は、なぜか神妙だった。眉間にしわを寄せ、にこりともしない。「2年契約の5000万円ダウンです」。一昨年は1億円、昨年は1億1000万円…。実はこれ、恒例となっていた“うそ”の契約金額。「本当は1億5000万円ではんこを押させてもらいました。一気に2億ぐらい、行くかと思ったんすけど…。あ、これも冗談ですよ」と、すぐさま訂正。「自家用ジェットを買おうかな~」。正真正銘の1億円プレーヤーとなったチームの顔は“舌好調”だった。

 初めて目にした「1億」という数字に「すごくありがたい。素直にうれしかったし、評価してもらっているんだと思った」と、感謝の言葉を並べた。4番としてチームを支えた今季は、初の打率3割到達に、リーグ2位となる自己最多の28本塁打をマーク。「個人的に去年の数字を上回ることはできたけど、チームが最下位というのが引っかかる」。悔いが残っていただけに、予想を上回る高評価に、自然と口元が緩んだ。

 視野は、ぐんと広がった。開幕前には第3回ワールド・ベースボール・クラシック(WBC)に野手最年少侍として出場し、シーズン終了後には台湾との親善試合で若手中心で構成された侍ジャパンの4番を張った。「野球人生でワンランク、ツーランク上がるための経験になった。日本と海外の野球は全然違う。日本には日本の良さがあるけれど、いろいろな国と試合をする中で、見習うべきところがたくさんあった。海外に対して今まで以上に興味が沸いてきた」。世界に触れたことで、野球人としての向上心が刺激された。日本ハムの4番から、日本代表の4番へ。その先には-。若き和製大砲は、スターへの階段を一段一段と上がっていく。【中島宙恵】

 ◆日本ハムの主な高卒野手1億円プレーヤー

 08年森本稀哲が10年目で1億円超え(6500万円→1億3000万円)、09年田中賢介が10年目(7500万円→1億4000万円)、96年田中幸雄が11年目(9000万円→1億3000万円)、10年高橋信二が14年目(7200万円→1億2000万円)で大台を突破した。投手ではダルビッシュ有が07年の契約更改交渉で7200万円から178%アップの2億円+出来高で更改。球界最速となるプロ4年目で2億円に到達した。