巨人菅野智之投手(24)が3日、右肘靱帯(じんたい)の部分損傷で出場選手登録を抹消され、ポストシーズン出場が極めて難しい状況となった。前日2日のヤクルト戦(神宮)で先発したが、右上腕、腰の違和感を訴えて2回で降板。同日夜に病院で検査を受けてこの日、球団から診断名が発表された。クライマックスシリーズ(CS)の登板は絶望的で、日本シリーズも困難だ。だが、セ・リーグのMVP候補右腕は、大一番での復帰へ最後まで執念を燃やした。

 ポストシーズンが迫る中、菅野にとっても、巨人にとっても、手痛い故障となった。前日2日のヤクルト戦。先頭山田を追い込んでからの直球で異変を感じた。2回まで投げたが、腰の違和感とともに降板。腰痛は軽症だったが、試合後に受けた右肘痛の診察結果は靱帯の部分損傷だった。「肩、肘はやったことがない」という右腕も、「いい状態ではないから覚悟していた」と受け止めた。

 時間がない。「しばらく1~2週間は経過を見る。何日間ノースローになるか分からない。状態を見ながら投げられるようにしたい」。CSファイナルステージまで2週間を切った。1週間以上のノースローは登板が絶望的なことを意味する。日本シリーズまでは約3週間だ。通例、靱帯の部分損傷は投球再開まで3~4週間を要するケースが多い。驚異的な回復を見せても、ぶっつけ本番となり、極めて難しい状況に変わりはない。

 離脱は大きな戦力ダウンだ。8月に右手中指の炎症、腰痛で約1カ月離脱したが、チームトップの12勝をマーク。今回の故障で投手3冠を逃すことになったが、最優秀防御率を手中にしている安定感はチームでも抜けていた。9月に復帰後は3連勝と勝負強さも目立ち、シーズンのMVP最有力候補にも挙がる。ポストシーズンでも先発ローテ1番手が決定的だったが、構想が根本から崩れた。

 だが菅野は可能性を捨てていない。「自分は可能性を信じている。いつになるか分からないけど、早く治して、早く上に上がりたい。それしか考えていない」。原監督の考えも同じだった。「監督からも『まだまだ望みを捨てるな』と言われました」。不可能と判断されるまでは、最善の努力を尽くすつもりだ。

 責任感が強い菅野はチームへの思いを募らせた。「チームの一員として戦う中で迷惑をかけて申し訳ない」。無理をして悪化すれば、手術、長期離脱という最悪のケースもあるため慎重を期す必要もある。だが、最短復帰への闘いは、諦めたら、その時点で途絶えてしまう。「諦められない自分がいる」。日本一を決めるマウンドに帰ってくることを信じ、リハビリに入る。

 ◆菅野の故障

 8月4日、右手中指の腱(けん)の炎症で、プロで初めて出場選手登録を抹消された。7月16日ヤクルト戦(東京ドーム)で二ゴロを打った際に負傷。負傷後もオールスター第2戦と後半戦2試合に登板していたが、患部の状態が回復しなかった。2軍調整中の8月23日には腰の違和感という理由でブルペン投球を回避し「僕の口からは何も言えません」。9月10日に1軍復帰し、4試合で3勝を挙げていた。