仙台6大学から日の丸戦士が誕生した。7月にオランダで開催される国際大会「ハーレムベースボールウイーク」に出場する大学野球日本代表24人が22日発表され、仙台大・熊原健人投手(3年=柴田)が初選出された。熊原は同日、神奈川・平塚で行われた選考合宿最終日の紅白戦で1イニングを投げ、前日21日に続いて無安打無失点の好投。好投手がそろう激戦をくぐり抜けて見事代表入りした。

 仙台大の“シンデレラエキスプレス”熊原が日本代表の座を勝ち取った。最終日の紅白戦で紅組1番手として登板。投手の候補19人中、当落選上にいた7人の最終テストだった。与えられたチャンスは1イニング。登板前の練習でスライダーの調子が悪いと自覚し、直球とフォークだけで思いっきり攻めた。

 先頭の亜大・北村を1球で中飛に打ち取ると、特別に1死一塁の状況が設定された。東海大・田中には5球ファウルで粘られて四球を許し1死一、二塁。だが、得点圏に走者を背負っても落ち着いていた。けん制し、捕手の千葉のサインにわざと何度も首を振って幻惑。横浜商大・谷口を一邪飛、愛知学院大・源田を投ゴロに仕留めた。2日間計3イニングを無安打無失点。「合宿の3日間、本当に力を出し切った」と、仙台6大学の投手では06年の東北学院大・岸孝之(西武)以来、仙台大からは初めて日の丸をつけることになった。

 今春まではリーグ1勝の無名選手。小、中、高と全国の経験もない。だが4月20日の東北工大戦でリーグタイの19奪三振。152キロの直球を武器にリーグ4勝、プレーオフ2勝で仙台大に67季ぶりの優勝もたらし、全日本選手権でも1勝を挙げた。このわずか3カ月間で一気にプロ注目の右の本格派にのし上がった。

 3日間で自信も課題も得た。「周りの投手は2種類の変化球をコントロールしていた。自分はまだスライダーやカーブが操れない」。その一方で「自分にしかないものもあるんだな、と思いました」。直球と同じ軌道から鋭く沈むフォークは大学トップクラスの打者から「あれは絶対振ると思う」と絶賛された。「選ばれたのは運。選ばれなかった人の分も頑張りたい」。シンデレラボーイは一気に国際舞台に駆け上がる。【高場泉穂】

 ◆熊原健人(くまばら・けんと)1993年(平5)10月19日、宮城県角田市生まれ。北郷小6年で野球を始め遊撃手。北角田中を経て柴田高から投手。仙台大では2年春からベンチ入り。今春、最優秀選手とベストナインを初受賞。大学選手権では2試合に先発し、1勝1敗。178センチ、76キロ。右投げ右打ち。家族は両親、兄、姉。血液型O。