侍ジャパン外野陣が、決勝Tの舞台となるAT&Tパークの右翼守備対策に乗り出した。右中間フェンスがえぐられたように食い込む、いびつな形状のため、打球が予測不能な角度で跳ね返る難攻不落の壁。07年球宴では、イチローが打った球の跳ね返りをグリフィーが読み誤り、球宴史上初のランニング本塁打が生まれる要因になった。緒方耕一外野守備走塁コーチを筆頭に、合言葉「ノーモア・イチロー」で壁攻略に臨む。

 ノックバットを握った緒方コーチが右翼の壁に向かって、角度、位置、高さ、強さを変えた打球を次々飛ばした。形状がいびつばかりか、場所により、網、レンガ、ラバーと材質が違うため、球が跳ね返る方向はバラバラ。内川、長野ら侍外野陣は「捕れると思ったらいってくれ。捕れない判断だったら壁との距離を取れ」というコーチの指示の下、不規則に動く打球を処理した。

 自ら壁に球を投げつけ、跳ね返った球筋を何度も確認した内川は「完璧は100%無理に近い。最低限のことをしっかりやりたい」と慎重な姿勢。練習を見守った他の外野手の目にも、壁の手強さはしっかり焼きついた。

 早めの打球判断に加え、欠かせないのは内野の協力。コーチは「中堅や右翼だけではなく、一塁、二塁が追うことが大事」と、もし後逸しても素早いカバーで進塁を防ぐ、厚い守備の重要性を説いた。

 目前の敵プエルトリコを倒すには、後方にそびえる右翼の壁を制することが先決。鋭い読みと確かな捕球で勝利を引き寄せる。(佐藤直子通信員)

 ◆イチローの球宴ランニング本塁打

 マリナーズ時代の07年7月10日、MLB球宴(AT&Tパーク)の5回1死一塁で迎えた3打席目にヤング(パドレス)の143キロ内角低め直球を捉えると、打球はレンガ仕様の右翼フェンスに張られた球宴用垂れ幕を直撃。右翼グリフィー(レッズ)がクッションボールの処理を手間取る間に本塁を駆け抜けた。球宴史上初のランニング本塁打で日本人初のMVPに。「越えてた方が良いですよね。イヤな球場だと、本当に思ったもん」「疲れちゃって大変でしたよ。昨日も今日も走ってないから。いかに走り込み不足がたたるかということを痛感しました」などと報道陣を笑わせた。記念球は殿堂入りした。