元年俸120円Jリーガーで格闘家の安彦考真(46)が20年夏から届ける日刊スポーツウェブコラム「元年俸120円Jリーガー 安彦考真のリアルアンサー」では、2月から不定期で各界の代表者や挑戦者らと対談する新企画「時代を担う若者たちに伝えたい!挑戦し続けるためのマイルール」をスタート。記念の第1回は、安彦も出場経験のある格闘技団体「RISE」の伊藤隆代表(53)の登場です。お互いの“マイルール”について語り合った前編に続き、後編では安彦がインタビュアー役となり、伊藤代表にさまざまな質問をぶつけました。【構成=松尾幸之介】

安彦 僕がRISEに出る、キックボクサーになると言って出てきた時の感想を聞いてみたいです。

伊藤代表 まずは年齢の部分の心配はありました。サッカーも格闘技もアスリートとしては同じですけど、人をたたくというのはまた違う部分もあるので。どれだけ対応できるか心配な部分がありました。話も聞いたり映像を見たりして、フィジカルは若い選手と変わらない。あとは経験。夢を閉ざすのも申し訳ないですし、1回やらせてみようかと。その代わり、レフェリーとドクターにはしっかり対応するようにと伝えました。

安彦 先日自分が出た大会の解説が原口健飛選手で、僕のことを「最初はキックボクシングなめてんのかと思っていた。でもそのあとみたら努力されているのを知ったので、今はファイターとして尊敬しています」と素直に言ってくれていたのがうれしかったです。

伊藤代表 僕の方には(安彦のデビューに)批判というのは特になかったですけど、頑張っている選手の中には何で彼がデビューできて、と思っている子はいたかもしれない。若い子に言いたかったのは話題性もプロなんだよというのを教えたかったですし、安彦さんの試合を3戦ほど見て、僕の目は間違っていなかったんじゃないかなと今は思っています。

安彦 昨年は僕も出させていただきましたが、オープンフィンガーでの大会も新たに設けるなどしていました。その狙いは

伊藤代表 オープンフィンガーはYA-MANとかが有名ですけど、もともとはRISEのグローブで伸びきれていない選手を伸ばすために始めました。そのコンセプトに合っている選手の1人が安彦さんだなと。インパクトも刺激もあってそれに乗れるかどうか。今は定着しましたけど、新たなステージとして開花していきたい道でしたね。YA-MANらが時の人になってくれてよかったです。

安彦 伊藤代表の経歴についてもお聞きしたいです。

伊藤代表 僕はけがで引退して、一時は妻子もいる中で路頭に迷った時もありましたが、自分なりに頑張って今があります。自分がやっていた70キロ級はあまり注目されていなかったですし、不遇な選手時代の同じ思いを若い選手にさせたくない。それがパワーになっています。あっというまに20年経ちましたね。

僕らが引退したあとに魔裟斗が出てきてかなり変わりました。僕は今、たまたまこの位置にいるからいいですけど、いろんな道に行った人を見ているので。当時は選手を育てても、預けられる団体がなかった。だから小さくてもいいので、輝かせられる場所を作ろうということで、団体を立ち上げました。

ここ数年でやっと形になって土台が固められたかなと思っています。。打撃格闘技を盛り上げて世界と戦っていく。先を見ていかないといけないので、今では全然満足してないです。那須川天心のようなスター選手をどんどん出さないといけないですね。

安彦 今はブレイキングダウンなど、プロ以外でもさまざまな格闘技イベントが行われています。

伊藤代表 ブレイキングダウンの社会への影響力はすごいですよね。犯罪とかそういうのは認められないですけど、プロイベントも考えて、勉強しないといけない。彼らが盛り上げることでプロも盛り上がっていかないと。否定はしないですが事故は怖い。ああいう大会からもっと強くなりたいと思う選手がいるなら、うちでも受けてあげたい。やんちゃな子が更正して、上を目指すサポートをする。それがプロのイベントの仕事だと思っています。

安彦 RISEの選手にもサッカー経験者は意外と多いんですよね。RISE FCのようなサッカーチームを作って、タイの選手とかとサッカー対決とかをしても面白いんじゃないかなと想像はしています。

伊藤代表 面白いですね。RISEサッカー部みたいなの。那須川天心のお父さんもサッカーのエリートなので、監督を頼んでもいいと思います。

安彦 那須川監督のもとにメンバーを集めて合宿とかしますか。めちゃくちゃ厳しそうですね。

伊藤代表 また違う角度で刺激になると思いますし、格闘技とサッカーのようなメジャースポーツがつながるのは面白い。相乗効果でお互いに良くなっていければいいと思います。


◆伊藤隆(いとう・たかし)1970年(昭45)9月22日、埼玉県出身。90年代から00年にかけてキックボクシング選手として活躍。元WMAF世界スーパーウエルター級王者。00年にキックボクシングジム「TARGET」を立ち上げ、現会長。03年には格闘技団体「RISE」を旗揚げし、代表取締役を務める。


◆安彦考真(あびこ・たかまさ)1978年(昭53)2月1日、神奈川県生まれ。高校3年時に単身ブラジルへ渡り、19歳で地元クラブとプロ契約を結んだが開幕直前のけがもあり、帰国。03年に引退するも17年夏に39歳で再びプロ入りを志し、18年3月に練習生を経てJ2水戸と40歳でプロ契約。出場機会を得られず19年にJ3YS横浜に移籍。同年開幕戦の鳥取戦に41歳1カ月9日で途中出場し、ジーコの持つJリーグ最年長初出場記録(40歳2カ月13日)を更新。20年限りで現役を引退し、格闘家転向を表明。22年2月16日にRISEでプロデビュー。プロ通算2勝1分け2敗。身長175センチ。

RISEクリエーション代表の伊藤隆氏と対談を行った安彦考真(撮影・鈴木みどり)
RISEクリエーション代表の伊藤隆氏と対談を行った安彦考真(撮影・鈴木みどり)
安彦考真と対談を行ったRISEクリエーション代表の伊藤隆氏(撮影・鈴木みどり)
安彦考真と対談を行ったRISEクリエーション代表の伊藤隆氏(撮影・鈴木みどり)
対談を行った安彦考真(左)とRISEクリエーション代表の伊藤隆氏(撮影・鈴木みどり)
対談を行った安彦考真(左)とRISEクリエーション代表の伊藤隆氏(撮影・鈴木みどり)
対談を行った安彦考真(左)とRISEクリエーション代表の伊藤隆氏(撮影・鈴木みどり)
対談を行った安彦考真(左)とRISEクリエーション代表の伊藤隆氏(撮影・鈴木みどり)
対談を行った安彦考真(左)とRISEクリエーション代表の伊藤隆氏(撮影・鈴木みどり)
対談を行った安彦考真(左)とRISEクリエーション代表の伊藤隆氏(撮影・鈴木みどり)