昨年1度取材しただけだが、ちょっと気になる若手ボクサーがいる。スーパーフェザー級で全日本新人王となり、敢闘賞も獲得した薬師寺ジムの森武蔵。まだ18歳。15日にジムの地元愛知の刈谷市で、プロ7戦目に臨んだ。

 相手のバレスピンはフィリピン同級王者で、東洋太平洋でも6位につける難敵だった。接戦となったが2-0の判定勝ち。森を勝者としたジャッジはいずれも1ポイント差と際どい白星も、これで7戦全勝(5KO)となった。

 取材したのは新人王の時だが、計量にただ一人スーツ姿で現れた。プロ3戦目の新人王西軍代表決定戦からスーツで計量がお決まり。「海外のスターはビシッと決めている。身だしなみはきちんとしたい」と話す。元世界王者の薬師寺会長にも「スーツで着てください」とお願いしたほどだ。

 小さいころからは空手をやっていた。キックボクシングも考えていたが、小3で「世界王者になる」と決意し、地元熊本・菊池にあるボクシングジムに通い始めた。決意のほどは食事に表れていた。おやつは甘い菓子ではなく、いりこや骨せんべい。中学までは鶏肉しか食べなかったという。

 その成果は11、14年のU15全国大会で優勝で示した。15年3月の中学卒業翌日には単身で名古屋に向かい、知人に紹介された薬師寺ジムに入門した。いくつか見学した中で「世界王者になるにはここだと思った」という。

 中2の時に危機があった。ロードワーク中に交通事故に遭ってヒザを痛めた。選手生命にも影響しかねない重傷だったが、森らしい自慢の逸話がある。事故は後ろからひき逃げされたものだった。森は痛みにも車のナンバーを見逃さず、逮捕につながったという。動体視力に根性もある?

 最近は高校や大学でアマの実績を作り、プロ入りするボクサーが多くなってきた。森もアマ経験者ではあるが、中卒で一獲千金を狙う昔のボクサーに通じるたたき上げと言える。

 プロ入り後に牛肉を食べて「こんなうまいものがある」と思ったそうだ。一方で不摂生を理由にラーメンを食べるのはやめた。まだ10代でこんな禁欲生活で、ストイックなボクサーはあまり聞かない。将来は「地元熊本で世界戦」という夢を持っている。【河合香】