今月5日開催の新日本プロレス大阪大会で英国遠征から帰国を果たした海野翔太(25)が、3年ぶりの日本マットで心身の成長を証明した。20日、東京・有明アリーナで行われた新日本と女子プロレス団体スターダムの史上初となる合同興行「ヒストリック・クロスオーバー」のセミファイナルで、ウィル・オスプレイ(29)が保持するIWGP・USヘビー級王座に“飛び級”挑戦。試合には敗れたものの、新しい新日本の幕開けを予感させた。

「止めるな!」。海野は試合中に、この試合を裁いていた実父、レッドシューズ海野レフェリーの足に必死でしがみついた。オスプレイの強烈なエルボーの乱打に、防戦一方になった海野の姿を見かねた父が、試合ストップの動きを見せたその時だった。俺はまだまだやれる。そんな思いを込めて、全身全霊の雄たけびを上げた。

ここまで海外でのオスプレイとのシングル対戦成績は2戦2敗。圧倒的な実力の前に屈してきたが、この日は一味違った。同級王座3度の防衛を果たしてきた世界最高峰のレスラーを相手に、勝ちへの執念を発揮。何度も3カウント寸前のキックアウトを連発し、師匠である元WWE王者モクスリー直伝の必殺技デスライダー(ダブルアーム式DDT)も決めた。最後は23分30秒、オスプレイの渾身(こんしん)のストームブレイカーに沈んだが、進化を実感させる敗北となった。

着々と階段を上ってきた。19年9月のヤングライオン杯で優勝を逃した後に海外武者修行を熱望した海野は、同年11月から英国遠征を開始。レボリューション・プロレスリング(RPW)を中心に活動し、今年6月のオール・エリート・レスリング(AEW)と新日本の合同興行「Fobidden Door(禁断の扉)」にも出場した。身にまとうものも、ヤングライオン時代の黒いパンツから、華やかなコスチュームへと変わった。

凱旋(がいせん)帰国初戦でいきなりタイトルマッチと、団体からも大きな期待を寄せられる。ベルト奪取にはあと1歩届かなかったが、ぎらついた目はそのままだった。「何度でも挑戦してやるよ。諦めねえ。何回転んでも転んだ回数+1起き上がって、お前の前に立ってやるから」と言い切った。「今日が第1歩。必ずまた立ってやる」。新日本の新時代を築いていく。【勝部晃多】(ニッカンスポーツ・コム/バトルコラム「リングにかける」)

2022年11月20日、実父のレッドシューズ海野レフェリー(上)の足にしがみつく海野(撮影・菅敏)
2022年11月20日、実父のレッドシューズ海野レフェリー(上)の足にしがみつく海野(撮影・菅敏)
2022年11月20日、実父のレッドシューズ海野レフェリー(左)が見つめる前でオスプレイ(中央)の攻撃を受ける海野(撮影・菅敏)
2022年11月20日、実父のレッドシューズ海野レフェリー(左)が見つめる前でオスプレイ(中央)の攻撃を受ける海野(撮影・菅敏)
2022年11月20日、実父のレッドシューズ海野レフェリー(左)が見つめる前でオスプレイ(右)の強烈なパイルドライバーを食らう海野(撮影・菅敏)
2022年11月20日、実父のレッドシューズ海野レフェリー(左)が見つめる前でオスプレイ(右)の強烈なパイルドライバーを食らう海野(撮影・菅敏)
2022年11月20日、実父のレッドシューズ海野レフェリー(左)が見つめる前でオスプレイ(右)の強烈なパイルドライバーを食らう海野(撮影・菅敏)
2022年11月20日、実父のレッドシューズ海野レフェリー(左)が見つめる前でオスプレイ(右)の強烈なパイルドライバーを食らう海野(撮影・菅敏)
2022年11月20日、実父のレッドシューズ海野レフェリー(奥)が見つめる前でオスプレイ(左)にキックをさく裂する海野(撮影・菅敏)
2022年11月20日、実父のレッドシューズ海野レフェリー(奥)が見つめる前でオスプレイ(左)にキックをさく裂する海野(撮影・菅敏)