3日目から始まった前相撲。初土俵を踏んだ新弟子8人の中に、24年ぶりに変更された新規定の適用第1号となって角界の門をたたいた若者がいた。二所ノ関部屋の一山本(いちやまもと)、本名・山本大生(だいき、23)。「前に出られて良かった」。中大4年時に全国学生16強入りした実力通り、豪快な押し2発での白星に笑みがこぼれた。

 日本相撲協会は92年12月に決まった23歳未満という新弟子の年齢規定を、門戸拡大と好素材獲得のため昨年9月に変更。中卒以上で23歳を超えて、幕下、三段目の各付け出し資格基準を満たさなくても、相撲など各競技で実績があると理事会が承認すれば、25歳未満まで受検可能になった。

 新弟子年齢は72年に義務教育終了という下限条件が決まったが、上限はなかった。23歳未満の規定ができる直前、92年春場所で話題になったのが、89年アマ横綱で27歳ながら幕下付け出しでデビューした元小結智乃花、現玉垣親方だ。当時3歳の息子もいた同親方は、高校教員の安定した職を捨て「どこまで上がる力があるか、やってみたかった」と角界に飛び込んだ。

 一山本は、北海道・福島町役場勤務を経てのプロ入り。「チャンスをもらったことに感謝したい」とやる気に燃える23歳に、玉垣親方は「悔いが残らないように、充実した人生にしてほしい」とエールを送った。【木村有三】