新大関で臨む名古屋場所(8日初日、ドルフィンズアリーナ)を目前にして、栃ノ心(30=春日野)が、かなりへこんでいる。

 「苦しいよ。昨日も豪栄道関に全然勝てなかったし、きょうは栃煌山関に…。苦しいよね。勝てないと、悲しいね」

 4日は境川部屋での出稽古で、先輩大関に0勝11敗。私は生で見ていないが、居合わせた関係者によると「全部完敗」だったらしい。で、5日は部屋で通常の朝稽古。いつもは栃煌山、碧山と関取3人でゴリゴリやり合うのだが、この日は左足かかとが痛む碧山が見合わせたので、栃煌山と三番稽古。16番とって、7勝9敗だった。

 しかも、十八番の「右四つ」にもっていけたのは1番だけ。序盤に2番、思い切って左をさして、押し込む“いい相撲”はあったものの、その他は勝っても引いて落とすなど、内容的にはダメ。つまり豪栄道、栃煌山と2日間通算27番で、気持ち良く勝ったのは1番しかなく…って、そらまあ落ち込むか。

 「当たりがちょっと弱いのかな? (立ち合いの体勢が)高いのかな?」

 豪栄道も栃煌山も、低く力強い立ち合いが持ち味。もともとやや腰高の栃ノ心には、やりづらい相手の上、ともに自身の取り口を熟知してるから、簡単にまわしを許してくれない。

 「(自分と)やりやすいんじゃない? もう思い切ってぶつかっていくしかないよ」。気持ちを奮い立たせようと、必死に自分に言い聞かせていた。

 それでも、春場所、夏場所前のことを思えば、名古屋場所は「問題ないやろ」と思うんです。もちろん素人なりになんですが。

 春場所前は、初場所の初優勝で勢いに乗り、大阪入り後絶好調。初日6日前にして「もういつ初日でもいい。明日でもOK」と豪語してた。ところが翌日、豪栄道との稽古で左足外側付け根をブチッとやった。「…調子よかったのにな…」とこの世の終わりのような顔で迎えた場所だったが、10勝5敗で乗り切った。

 夏場所前はどうだったか。この日と同じく初日3日前に栃煌山と10番とって4勝6敗。同じように右四つにほとんど持ち込めなかった。現在、夏場所で痛めた右手首に不安を抱えているが、当時は春場所で痛めた右肩に、今より大きな不安を抱えていた。場所に入ると、朝稽古で相撲を一切取らず、若い衆への胸出しだけで調子を整えた。そんな中で12連勝(1不戦勝含む)して13勝2敗。横綱白鵬にも初めて勝って、大関昇進を決めた。

 …そんな風に思うので、こう聞いてみた。

 大関、春場所と夏場所と比べたら、相撲とれるだけええんちゃいますの?

 「う~ん、ダメだ、ダメだと思ってたら、気持ちがダメになるからね。気持ちが大事。一日一番、気合入れてやりますよ」。

 場所中の朝稽古は、夏場所のように若い衆に胸を出すだけになるかもしれないらしい。そこは「状態を見ながらね」という。

 場所に入れば「何じゃ、あの怪力」と驚く相撲を普通に見せる、優勝戦線に絡む-。普通にそう思う。なんべんも言いますが、素人考えですけど。【加藤裕一】