村田の強みは何か。先月現役を引退した元WBC世界バンタム級王者山中慎介氏(35)は南京都高(現京都広学館高)帝拳ジムで長く先輩、後輩の間柄で過ごした。間近で見てきた「神の左」が語るすごみとは?【聞き手=阿部健吾】

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 肉体面、精神面のスタミナが村田のボクシングを支えていると思います。

 出会いは僕が専大1年、村田が高校に入学した年の夏でしたね。合同練習のロードワークで断トツ。大学生もいたんですけどね。プロでも一緒の合宿もありましたが、長距離走は追いついてやると思わないくらい速い。ちょっと速いくらいなら追いついてやろうと思うんですが。

 ボクサーは単純に手数、動きが多いから疲れるわけではないんです。思うように手が出なかったり、思い通りにいかない時こそ疲労感が増す。周りから見えない戦いづらさがあったり。それがスタミナに大きく影響する。その状況でもいかに耐えて、折れずに戦い続けられるか。村田の強さはその耐性にこそある。生来のずばぬけた持久力に支えられ、精神的にも枯渇することがない。昨年のエンダムとの試合2回でもそう感じました。

 体力面は日頃の練習でも強さを培っている。通常は練習の終わりにやる腹筋練習をした後に、またグローブをはめるのをよく見ます。「いや、もう無理やろっ」て思うくらいですよ。決まった練習パターンはなくて、自分で考えている。それにはあれだけの練習をできる体の強さもないと無理ですね。

 その試行錯誤で、ここ数戦で良くなっているのは左ジャブですね。独特のタイミングが良い。相手の呼吸を見て、ちょっとずらし、分からないタイミングで打つ。ジャブが当たるかはスピードではないんです。どんなパンチでも来ると分かっていたら反応できたり、よけたりガードできたりできる。僕が一番大事だと思うのはタイミングで、初防衛戦でも成長が見られると思う。

 本当の意味では、ミドル級の超一流とやった時に村田の実力が評価されると思っている。もちろんいまは世界王者、金メダルも取り言うことないでしょうけど、もったいない。もっと強いんですよ。もっと上とやっても負けるとは思わない。そのためにも初防衛戦をクリアしてほしい。楽しみですね。