【グラスゴー(英国)15日=藤中栄二】WBA世界バンタム級王者井上尚弥(26=大橋)が日本人初の欧州世界戦勝利を狙う。18日(日本時間19日)に同地でIBF世界同級王者エマヌエル・ロドリゲス(26=プエルトリコ)との階級最強を決めるトーナメント、ワールド・ボクシング・スーパーシリーズ(WBSS)準決勝を控え、15日に公式会見。ロドリゲスと約15秒間のにらみ合いを展開した井上は昭和、平成と続いた日本人の欧州世界戦連敗を、令和で止めるつもりだ。

晴れやかな表情だった井上が一転、ロドリゲスと向き合うと鋭い目つきに変わった。公式会見後、写真撮影でにらみ合うと、お互いに目をそらさなかった。時間の経過とともに会場も静まりかえった。約15秒後、先にロドリゲスから目を離し、立ち去った。「(体重を)結構、絞っている印象。気合も感じましたね」と井上。“前哨戦”を終え、いつもの表情に戻った。

ボクシング発祥の地で期待されていることは分かっている。「KOを狙っていきたい。ロドリゲスは素晴らしい選手ですが、KOチャンスをつかみたい。流れの中で狙っていきたい」。米国で最も権威ある専門誌「ザ・リング」認定ベルトが決勝進出者に贈られることが決定済み。会見で披露され「勝って、もらえれば」と口調を強めた。

過去、日本人は欧州で臨んだ世界戦で未勝利。王座決定戦を含めて挑戦する立場ながら17連敗中という不名誉記録が続く。「実力なのか、時差、環境が日本人に合わないのか。環境の違いは大きいと思います。ベストコンディションに仕上げるのが難しいでしょうし」と冷静に分析した。日本人初の欧州世界戦勝利へ「勝つことによって後からついてくるもの」と静かに燃えた。

17年9月、井上自らがWBO世界スーパーフライ級王者として米国初上陸した際の経験を生かす。「米国では計量後、ステーキ店に行ったら、ご飯がなかった。肉だけを食べたら試合までに本来の体に戻らなかった」と炭水化物が不足した。トレーナーの父真吾氏によると、英国には通常の4~5倍するという高級米5キロ、梅干し、のりのつくだ煮を持参。宿泊先のキッチンで減量食を用意するなど、対策を練った。大橋会長も「尚弥が言っている『過去最高の出来』という言葉に同感」と自信を示した。

過去最強の相手、IBF王者とのWBSS準決勝へ「ロドリゲスの研究もかなりしましたし、あと向き合って感じるものも多くある。上がってから確かめたい」。ボクシング発祥の地で、井上が日本人初の欧州初勝利をつかむ。