「年俸120円Jリーガー」としてプレーし、今季限りでJ3、YSCC横浜で現役引退した安彦考真(42)が24日、都内で格闘家転向へ向けた初練習を行った。

安彦はJリーガーとしての現役最終戦となった20日のJ3最終節、藤枝MYFC戦に先発出場。後半13分までプレーし、試合後のセレモニーで競技経験のない格闘家転向を発表し、格闘技イベント「RIZIN」出場を目標に掲げていた。格闘家としての始動場所には39歳でJリーガーを目指した際にもトレーニングサポートを受けたスポーツジム「IWA ACADEMY」(東京都千代田区)を選択。「現役サッカー選手を終えてダラダラいくより、年内に始めておきたかった」と当時も厳しい指導で夢を実現させた田辺大吾トレーナー(33)と共に約1時間、汗を流した。

この日は強いパンチを生み出すための骨盤の動作確認や、懸垂や綱引きなど、腕や背中の筋肉を使うサーキットトレーニングを取り入れた。2度目の挑戦も支えることになった田辺トレーナーは「前回、仕事を全部辞めて来た時の衝撃に比べたら驚きはないです。ひねる動きが硬いので、まずはここで基本に戻って、あとは専門家のみなさんの指導に委ねたい」と話した。初回から容赦のないハードトレーニングにも安彦は息を切らしながら食らいつき、何とか完走。途中で着ていた上着2枚を脱ぎ捨て、最後はタンクトップ姿で床に倒れ込んだ。安彦は「サッカーとは違うコンディション強化は必要になってくる。これに耐えていけるかどうか。乗り越えていくしかない」と額を拭った。

今後は専門家らと自身に合った格闘技の種類を見極め、より専門的な練習を始めていく。すでに知人を介してジムとのコンタクトもとっているといい、安彦は「知り合いからは『命に関わるから』と止める声もありました。死と向き合いながら何を表現したいのか。僕はただ目の前の相手をぶったたきたいとかではなくて、そういう自分の表現できるものを1年間かけて見せ続けたいと思います」と力を込めた。

安彦の発表を受けたRIZIN関係者の反応も耳に届いたとも明かし「決していいものではなかった。燃えますよね。このままでは終われない」とさらに気合はみなぎった。今回はJリーガーを目指した時よりも周囲からは前向きな意見が多かったといい、自身の考える一番の武器には「人間力」をあげた。「不屈の精神で、『こいつ倒れねえな』と思わせたい。パンチもキックも素人だけど、生き様だけは勝てるかもしれない。挑戦者としての魂とかそういうところかな」と意気込んだ。

安彦は39歳の時に20代の頃に1度は諦めたJリーガーへの再挑戦を決意し、18年に練習生を経てJ2水戸とプロ契約。昨季移籍したYS横浜での同開幕戦で41歳1カ月9日で途中出場してプロ初出場を飾り、ジーコの持つJリーグ最年長初出場記録(40歳2カ月13日)も更新。年俸120円の“ほぼ0円”契約も話題となる中、シーズン開始前に今季限りでの現役引退を表明。次なるステップとして格闘家転向を掲げていた。【松尾幸之介】