東日本大震災から10年の「あの日を忘れない」と題した大会に、WWEのNXT UKに参戦中の里村明衣子(41)が、被災地への思いを背負って登場した。この日のために帰国し、5カ月ぶりにセンダイガールズのリングに復帰。「2万2000人という方が亡くなっていることを聞くと、完全復興というのは一生ないのかも。私なりの復興の意味を込めて試合をした」と被災地への思いをリング上で表現した。

05年7月の設立時から、みちのくプロレスの新崎人生らと携わり、震災後半年の11年8月から代表を務める。当時はいつまでやれるか分からない状況の中、関東などへの遠征で全国の人に支えられていることに気付いた。「10年前に引き継いで、予想ももつかないまま突っ走ってきた」。当時は感謝の気持ちすら抱けず「現状の悔しさに、いつか見てろよ、という思いだった」と心境を明かした。

そんな里村を支えてきたのは、この日戦って勝利したDASH・チサコの存在。「何も言わずにずっとついてきてくれた。仙台女子は胸を張って任せられる」。新たなスタートを切るため、今年1月、WWE参戦を決め、イギリスに拠点を移した。

この日の試合はお互いの意地をぶつけあった。序盤は里村の絞め技が何度もさく裂。DASHは必死に耐え、ロープをつかんで抵抗。膝蹴りやコーナートップからのフットスタンプを浴びせ「里村、こんなもんか」と挑発した。場外戦も展開された激闘は、最後里村のデスバレーボムで3カウント。「この10年間絶対に幸せになってやると思ってやってきた。本当に感謝の気持ちでいっぱい」と涙を見せた。

「これからも心は離れずにしっかりと応援したい。みんなトップスターになると思う」。里村は自らが育てた頼もしい後輩たちに後を託し、東北への思いを胸に、再び歩み始めた。【松熊洋介】