LDHの格闘部門LDH martial artsに所属する元レスリング戦士の中村倫也(27)が、インドネシアのググン・グスマンを1回一本で退け、UFC契約へ前進した。

序盤からテイクダウンを奪ったが、後頭部への打撃で注意を受け、ポイントを減点されてしまう。それでもリズムを乱さず、タックルで2度目のテイクダウンを奪取。すぐさまV1アームロックの形に移行し、一瞬にしてタップアウトを奪った。1回3分24秒の決着。相手にほぼ何もさせることなく、総合転向4戦目で初の一本勝ちを収めた。

試合後も冷静さを失わず。「レスリングについては自信があった。相手の打撃については驚くことはなかった」と、流ちょうな英語で振り返った。

16、17年のレスリングフリースタイル全日本選抜選手権を優勝。レスリングで東京五輪出場を目指したが、根本にあったのは総合格闘技への思いだった。「物心ついた頃から『総合で世界を取る』という思いがあった」。シンガポールで、その夢への第1歩を踏みしめた。

世界最高峰のUFCを目指したのは必然の流れだった。父は、埼玉・大宮でシューティングジムを運営し、修斗を支えた人物でもある故・晃三さん。幼少期には、父の関係で実家に住んでいたこともある、元UFCウエルター級王者カーロス・ニュートン(カナダ)と交流があった。「僕が小さい時にずっとUFCのベルトが家にあった。その時からはタイトルマッチを見ていました」と、当時を懐かしむ。

準決勝は9月、前日に勝ち上がった風間敏臣と日本人対決を戦う。「UFCを日本に持ってこられる存在になりたい」。ただ契約を勝ち取って終わりではない。中村は既に、その先を見据えている。【勝部晃多】