同級4位重岡銀次朗(23=ワタナベ)が、屈辱をバネにベルトを手にした。

同級3位で元同王者レネ・マーク・クアルト(26=フィリピン)と対戦し、9回KOで勝利した。

1回には相手の強打に思わずダウンを喫したが、序盤をしのぐとペースを握った。正確にパンチを当てて、6回に強烈なボディーへのフックでダウンを奪う。7回にも左のボディーフック2発でダウンさせた。

そして9回、2分すぎにステップインして力強い左ボディーフックでダウンを奪う。さらに残り15秒ごろに今度はコンビネーションからがら空きの腹に、左ボディーフックを打ち込んで、このラウンド2度目のダウンを奪取。苦悶(くもん)の表情を浮かべたクアルトは必死で立ち上がったが、レフェリーが試合を止めた。

2016年4月16日に故郷の熊本は大地震に見舞われた。その因縁の「4・16」の大一番を制し、「4月16日、何が何でも世界を取るとの思いで戦いました。みなさんに笑顔を届けたかった。めちゃくちゃうれしい」と喜んだ。

重岡銀は今年1月6日に世界初挑戦。王者ダニエル・パラダレス(メキシコ)を相手に優位に試合を進めながら、自身のあごに王者の頭が直撃。王者陣営の試合続行不可能という主張で無効試合になった。

今回も再戦となるはずが、王者側が左鼓膜負傷を理由にかなわず。3150FIGHTを手がける元世界3階級制覇王者の亀田興毅ファウンダー(36)が苦心の末にたどり着いた暫定王座決定戦だった。

重岡銀は前日計量後に「俺がKOで王者になります」と宣言した。興毅氏は「勝てば(正規王者との)統一戦。ストーリー的にもおもしろい。早い段階でやらないといけない」と確約していた。

今回は兄の優大とのダブル世界戦。「2人で挑める心強さがある。前回よりも安心感があるし、全然怖くない。2人で興行を盛り上げるのはすごい楽しみ」と話していた。

“逃げた”パラダレスがインタビューに応じた動画を見た。「向こうで元気にやっているみたいでよかった」といやみをかまし、メキシコで再戦を望む発言には「またずるされそうで怖い。勝手に言ってるだけで相手にしていない」と一蹴した。

興毅氏が「化け物」とほれ込む逸材が、まず最初のステップを切った。次のターゲットはパラダレスとなるのか。元WBA世界ライトフライ級王者具志堅用高氏の連続防衛日本記録13回超えを掲げる男は「13回防衛は最終的にかなえる目標」とあらためて誓った。

◆重岡銀次朗(しげおか・ぎんじろう)1999年(平11)10月18日、熊本市生まれ。幼稚園から小学6年まで空手。小学4年から並行してボクシングを開始。小学5年からU-15(15歳以下)全国大会で5連覇。熊本・開新高で16、17年高校選抜連覇、16年国体優勝など5冠を獲得。アマ戦績は56勝(17KO・RSC)1敗。18年9月にプロデビューし、プロ4戦目でWBOアジア・パシフィック・ミニマム級王座を獲得。22年3月には日本同級王座も獲得。家族は両親と姉、兄、妹。身長153センチの左ボクサーファイター。