ボクシング元世界4階級制覇王者井岡一翔(34=志成)が多くの逆境を乗り越え、即再戦での世界王座返り咲きを目指す。

24日、東京・大田区総合体育館でWBA世界スーパーフライ級王者ジョシュア・フランコ(27=米国)に挑戦する。23日に都内で前日計量に臨み、リミットより少ない52・0キロでパスした一方、王者フランコは井岡の薬物検査の異例発表で動揺。3キロ近くも体重超過して王座剥奪となった。井岡が勝てば新王者、負ければ空位の条件で試合開催されるが、波乱続きの世界戦となった。

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フランコは1回目の計量でリミットを3・1キロも超過した。55・2キロは2階級上のスーパーバンタム級(55・3キロ)のウエート。2時間以内に再計量が認められているが、この時点でその後の展開は分かっていたのだろう。「いろいろあったが、試合はできることになったので楽しみにしている」と直後の会見でポロリ。2度目の計量で絞ったのは200グラムだけだった。

2日前にJBCが、前回の試合後のドーピング検査で井岡から大麻成分が検出されたと発表した。トレーナーのガルシア氏は「報道で知り、試合が開催されないんじゃないかと思い、本人もチームも精神的に追い込まれた」。詳細は明かさなかったが、最も苦しい減量の最終段階で、王者の忍耐と緊張が途切れたのかもしれない。

昨年大みそかの井岡との王座統一戦の前日会見では「試合は素晴らしいショーになる」と王者らしく自信をみなぎらせていたが、この日は別人のように「日本は大好きな国なので戻ってこれてうれしく思う」と、小さな声で遠慮気味に口を開いた。

計量失敗で王座は剥奪。両陣営の話し合いで、当日午前10時の計量で130ポンド(58・97キロ)をクリアすれば、試合は行われることで落着した。リミットから実に約7キロも重いフランコに大甘な措置は、何としても試合を実現させたい井岡側、主催者側の強い意向があったのだろう。「素晴らしい試合ができると思います」。会見の最後、フランコからのメッセージが、むなしく聞こえた。【首藤正徳】

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