大関琴奨菊(31=佐渡ケ嶽)は、「これしかないよねえ」と、笑顔でスラスラと1文字を選んだ。「変化の『変』。やっぱり、今年は結婚したのもあるしね。本当に、変化の年だった」。

「これしかないよねえ」と「変」と書いた琴奨菊
「これしかないよねえ」と「変」と書いた琴奨菊

 祐未夫人とは2月に婚約し、名古屋場所直前の7月10日に婚姻届を提出した。「家に帰ったときに、温かいご飯がある。それだけでも全然違う。ともに戦ってくれている感じ。心強いよ」と話す優しい笑顔が、印象的だった。

 今年は5度目のかど番を迎えるなど苦戦が続いたが、秋場所では鬱憤(うっぷん)を晴らすかのように11勝。満身創痍(そうい)の中で、ようやく上を見据えて戦える状態に戻ってきた。「勝負師は孤独なもの。とくに自分は考え込むほうなので、安らぎが入り、癒やしが入って、相撲にも向き合いやすくなった」と、復調の要因を明かした。

 だが、満足はしていない。地元に凱旋(がいせん)した九州場所では前半戦こそ優勝争いをしたものの、最後は「左前脛骨(けいこつ)筋挫傷」で休場。8勝に終わり「地元の皆さんに最後まで元気な姿を見せられず申し訳ない」と反省した。ケガはまだ完治していないが、冬巡業では朝稽古こそできない中で「その分、準備の段階として自分のペースでうまくやれている」とプラスに捉えていた。

 慢性的なケガとの闘いもあり不本意な結果続きだったが、ようやく光を見いだした2015年。来年へ向け「しっかり自分の相撲を取りきって、やることをやって、決めたことを全うする。それしかない」と言い切った。殻を破った先には、さらに明るい未来が待っているはずだ。【桑原亮】