休場明けの横綱稀勢の里(31=田子ノ浦)が早くも2敗目を喫した。東前頭2枚目の栃ノ心を立ち合いで突き放せずに前まわしを許すと、なすすべなく寄り切られた。苦しい場所になってきた。横綱日馬富士と大関照ノ富士、豪栄道は初日を出したものの、横綱鶴竜が初黒星を喫したため、全勝は早くも横綱白鵬と小結嘉風、平幕阿武咲、碧山、錦木の5人だけとなった。

 何度か首をかしげた。頭で考える相撲が、体で表現できないもどかしさ。稀勢の里は大きなため息をついた。3日目での2敗は大関だった昨年秋場所以来になる。苦しい立場に追い込まれた。

 立ち合い、いつもの右足ではなく左足から踏み込んだ。負傷した春場所13日目の日馬富士戦以来で、左上腕付近をけが後は初めて。栃ノ心を突き放す狙いだった。だが、腰が高く、右の突きに威力がない。反対に右前まわしを許して左も封じられた。そこでおっつけに行くこともなく、頭をつけた相手を止められない。なすすべなく寄り切られて、大量の座布団が舞った。

 左足からの踏み込みは、左腕が回復した証しになるはずだった。だが…。二所ノ関審判部長(元大関若嶋津)は「(まわしを)切ろうとしても切れない。(腰が)高い」と指摘し、不調だった二所ノ関一門の連合稽古を引き合いに「1週間程度ですぐには良くならない」とばっさりと言った。

 2場所連続で味わう苦しみ。今後について「明日しっかりやるだけです」と力なく言った。出る以上、横綱には結果が求められる。八角理事長(元横綱北勝海)は「苦しい場所になるな。苦しいところで勝っていかないと。明日は勝つんだと思って続けていくしかない」と巻き返しを願った。【今村健人】