大相撲の元横綱日馬富士関による暴行問題で、被害者の平幕貴ノ岩関の師匠、貴乃花親方(元横綱)が11月30日の日本相撲協会理事会で、協会危機管理委員会による弟子の事情聴取に条件付きながら同意した。拒否の姿勢から翻意した内幕が1日、出席者らの話で明らかになった。

 東京都墨田区の両国国技館の会議室で開かれた理事会には役員ら24人が出席した。出席者によると、理事でもある貴乃花親方は、向かいに座った八角理事長(元横綱北勝海)から「調査に協力してもらえないか」と要請を受けたが断った。同親方は用紙を持参し、問題の経緯を読み上げた。「一般の方に迷惑を掛けたかもしれないので、警察に届け出た。巡業部長として、自分の弟子でなくても同じことをした」と報告した。

 空気は重苦しく、複数の理事らが協力するように説得した。ここで、外部理事で危機管理委の高野利雄委員長(元名古屋高検検事長)が、捜査している鳥取県警に電話することを発案。自ら電話をかけ、協会による貴ノ岩関聴取が捜査に支障がないことを確認した。

 それでも「協力できない」と貴乃花親方。高野委員長は「では定款に沿って対応させてもらう」と、協力しない場合は処分に発展することをにおわせた。日馬富士関の師匠だった伊勢ケ浜理事(元横綱旭富士)も「定款がある」と続く。最終的に貴乃花親方は、警察の捜査が終われば、聴取に応じる意向を示した。

 出席者によると貴乃花親方は八角理事長らとほとんど目を合わせなかった。別の出席者は「どうにもこうにもならない男だ。結局は協力に応じない可能性だってある。問題は長引くかもしれない」と疲労感を漂わせる。“平成の大横綱”を表立って擁護した出席者は皆無。貴乃花親方の孤立、協会側との溝の深さが浮き彫りとなった。